2023-04-09

日本パレットレンタル・加納尚美社長に直撃!「『パレット』の有効活用で物流業界の課題解決を」

トラックドライバーを重労働から解放したい─。我々の生活はモノで溢れ、毎日の食卓には産地直送の食品が並びますし、近くのお店に足を運べば求める商品が手に入ります。しかし、これらは勝手に空を飛んで届くわけではありません。誰かが運んでいるのです。

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 しかしながら物流業の産業界の中での地位は非常に低いというのが現状です。もともとコロナ禍前から問題視されていたトラックドライバー不足ですが、コロナ禍でのECにまつわる荷物の急増も影響して、厳しさを増しています。

 2024年にはトラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用されます。加えて問題なのは物流業界のデジタル化が他産業と比べても大変遅れていることです。これらは、他人任せでなく、物流業界全体が自ら取り組んでいく課題です。ただ、多くの企業をつなぐ機能を担う物流の非効率は産業界全体で考えるべき課題でもあります。

 例えば、トラックの積載効率は約40%。片道は空になっているという計算になりますし、手作業での荷物の積み降ろしや、荷物を降ろすまでに待機する「荷待ち」が数時間に及ぶことも珍しくありません。こうした非効率の解消は発・着荷主の方々の協力なしにはできません。

 では、物流業界のデジタル化を推進し、いかに作業を効率化させるか。その答えの1つが「パレット」です。フォークリフトで荷物を積み下ろす際に欠かせない荷役台ですが、これが日本にはおよそ5億枚存在すると言われています。ところが、その大半が保管用に使われ、当社の推定では輸送用には、4000万枚程度しか使われていません。一方、約5000万人と日本より人口が少ない韓国では輸送用に約4000万枚のパレットが使われているのです。

 まずはこの眠っているパレットを使うことで大幅な作業効率が実現できます。保管用に使われている既存のパレットを輸送用に使うことができれば、ドライバーが荷物を手でトラックに積み込む必要がなくなり、重労働は減ります。

 さらにパレットを自社保有からレンタルに切り替えることでも生産性は上がります。当社は約1100万枚のパレットを保有しており、年間延べ約4800万枚のパレットを企業に向けてレンタル供給しています。

 企業様が自前でパレットを保有する場合、輸送先に荷物を運んだ後、そのパレットを自分たちで回収しなければなりません。しかし、レンタルではメーカーから卸売、小売に出荷した後、空いたパレットを当社が回収に伺います。これによりパレットにかかる手間がなくなるわけです。

 そしてデジタル化という観点でもパレットのIoT化は進んでいます。当社のパレットにはRFIDが付いており、パレットの上に乗った商品とセットにして物流システムに連携する取り組みも始まっています。

 どんな商品が何個載っているか。食品であれば賞味期限はいつなのか。こういった情報を企業間で共有することで、出荷や入荷の検品の手間も省くことができますから、ドライバーは本来の業務である運転に集中することができるようになります。

 ただ、課題もあります。それはパレットの規格標準化です。標準化はパレット輸送の要。国も110センチ四方のパレットを推奨するなど、かつてない程に標準化に力を入れています。大きな改革には時間がかかるかもしれません。しかし、パレットという身近な存在の有効活用が課題解決の一歩になるのです。

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