2023-04-26

「乳歯を活用して脳性まひの機能改善を」キッズウェル・バイオの「再生医療」戦略

谷匡治・キッズウェル・バイオ社長CEO



 脳性まひは、受胎から生後4週までに生じた脳の病変によって、運動機能や姿勢に異常が生じる病気のこと。妊娠中や出産時、出産直後に低酸素状態になったり、脳内での出血、早産による低体重で産まれることなどから、脳に異常が生じて起こる疾患と考えられている。

 発症率は1000人に2人くらいの割合。周産期医療の進歩にもかかわらず、脳性まひの発症率は減少していない。〝非進行性〟と言って、進行することはないが障がいは一生続き、大人も多い。運動障害に対する治療で各種リハビリテーションが実施されているが、その有効性を証明する充分な科学的根拠はないという。このため、運動機能を改善する新規治療法の開発が強く望まれているのだ。

「車椅子のお子さんを車に乗せるための電動設備に費用がかかったりして、脳性麻痺患児が成人するまでには、健常な子供より2500万円から7千万円が必要だという試算も出ている。指定難病になっているわけでもないので、医療費の助成もなく経済的に厳しい環境にある」(最高執行責任者=COOの川上雅之氏)

 同社によると、すでにラットの実験では、SHEDを投与することで、ラットの脳の中で神経再生が促されていることが確認できたという。「脳性まひの慢性期のモデルにおいて運動障害の改善を確認したのは世界で初めて」(川上氏)で、名古屋大学と共同ですでに特許を出願。

 今年度から臨床研究を開始する予定で、安全性の確認や臨床開発に必要な連携体制の確立を進め、2030年度以降の上市を目標にしている。

「再生医療(細胞治療)に本格的に乗り出してから4年が経ち、いよいよ臨床に入れるステージになってきた。この間に基礎研究や細胞の特性、どういう疾患に効きそうかということをとにかく積み上げ、細胞の特性を見極めてきた。中でもフォーカスしていきたいと考えているのが脳性まひ。第一号の製品として何とか上市していきたい」と語る谷氏。

 世の中には、治療法の確立がされていない疾患がまだまだある。新たな科学とテクノロジーで、谷氏のアンメット・メディカル・ニーズ(いまだ満たされていない医療ニーズ)への挑戦が今後も続く。

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