「治療法が不十分な疾患に対する医療を提供していきたい」─。東証グロース上場で北海道大学発の創薬ベンチャーとして知られるキッズウェル・バイオ。近年、同社が注目しているのが子供の歯(乳歯)。高い修復・再生能力を持つという乳歯の細胞に着目し、乳歯歯髄幹細胞(SHED)を活用した再生医療事業に取り組んでいる。従来、捨てられていた乳歯が脳性まひなどの機能改善を促すことはできるか─。
脳性まひを治療する再生医療の実現に向けて
「社名に〝キッズ〟とあるように、子供の細胞を活用して疾患を治していくことが、われわれの使命。お子さんの細胞は非常に活性が高く、大人の細胞に比べていろいろな可能性が広がってくるということで、治療法が不十分な疾患に対する医療を提供していきたい」
こう語るのは、キッズウェル・バイオ社長CEO(最高経営責任者)の谷匡治氏。
近年、患者自身の細胞・組織や他者の細胞・組織を培養等加工したものを用いて、 失われた組織や臓器の機能を修復・再生する再生医療への注目が高まっている。
中でも、同社が着目したのは、SHEDと呼ばれる「乳歯歯髄幹細胞(Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)」。歯の内部に存在する歯髄から採取される幹細胞で、乳歯から採取された幹細胞は特に活動が活発で、高い修復・再生能力を持つという。
原料となる乳歯は、7~12歳くらいの子供が大人の歯(永久歯)に生え変わるタイミングで採取。ドナー(子供)1人あたり20本近く採取でき、ドナーへの負担が少ないのが特徴だ。
同社が目指すのは、未だ有効な治療法が確立されていない病気に対して細胞治療による新しい治療法を創出すること。脳腫瘍や視神経症、脊髄損傷といった疾患への期待が高まる中で、まずターゲットに据えるのが脳性まひを治療する再生医療の実現である。