2023-05-30

新潟を拠点に「大手の飛ぶ路線に飛ぶ!」 トキエア・長谷川政樹の新・地域航空ビジネス

トキエアが使用する仏ATR社製のプロペラ機



佐渡ヶ島の活性化に向けて

 実は新潟には世界文化遺産の登録を目指す「佐渡島の金山」がある。最短で24年の登録を目指しており、過疎化が進む佐渡にとっては観光客を呼び込むことができる最大の好機となる。

 しかし、佐渡ヶ島の佐渡空港の滑走路は890メートル。大手が使うジェット機では滑走路が短すぎて就航できない。一方でトキエアの機材であれば800メートルでも着陸が可能だ。さらに貨物を運ぶこともできるため、災害などが起きた際の救援物資や医療物資も運ぶことができる。

「佐渡ヶ島には麻酔医が1人もいない。東京から直行便ができて70分ほどで行けるのであれば、出張ベースで東京の麻酔医を佐渡ヶ島に連れていける」

 他にも日本初のエアラインコミュニティに向けたNFT(非代替性トークン)を販売。デジタル会員権として扱い、保有者には運航乗員が着用するジャケットの購入権や客室乗務員の非常脱出訓練に乗客役として参加できる権利などを提供する。

 また、同社はトキエアをサポートする会社としてトキアビエーションキャピタルというパイロットなどの航空人材の派遣と紹介などを手がける会社も設立。トキエアで防衛省のパイロットを採用した実績や世界中で航空人材を派遣する台湾企業と包括提携し、2030年までに2000人のパイロットが不足すると言われる「2030年問題」にも対応して収益の多角化を図る考えだ。


トキエア・長谷川政樹社長

 新潟空港を利用する旅客は年間100万人規模で長らく横ばいが続いている。トキエアの使用する機材はジェット機より着陸料を65%減らせるため、大手の半額以下の運賃を目指す。運賃を下げることで新規需要の掘り起こしを狙う。実際、「新潟県の人々は予約1カ月前の運賃の安い時期を過ぎると、旅行自体を諦めてしまう」からだ。

 そう強調する長谷川氏は新潟県出身。JAL、新潟県庁、LCCのジェットスター・ジャパン、三菱重工業で多様な経歴を積んできた。三菱重工では三菱航空機を担当して欧米の関係当局との調整業務に当たった。

 JAL時代は経営破綻も経験した。同社で学んだのは故・稲盛和夫氏の「計画は緻密に、行動は大胆に」だ。トキエアがトキのごとく日本中の空を飛び回るかどうかは長谷川氏の腕にかかっている。

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