スーパーウーマンとしか言いようがない波乱万丈の半生記

　超一流のコンピュータ科学者であり、伝説的ベンチャー企業からGoogleXのリーダーを経て、現在はパナソニックの常務として同社のイノベーションをリードするシリコンバレーのスーパースター、Yokyこと松岡陽子さんの新著である。

　東京郊外のサラリーマン家庭に生まれた内気な少女がテニスの才能に目覚め、自らの意志で高校時代にプロテニスプレーヤーを目指して米国に渡り、錦織選手と同じテニスアカデミーに進む。怪我でその道を断念した後、今度はロボティクスやコンピュータサイエンスというアカデミアの世界で飛躍していく。そこからさらに起業、グーグルの最高幹部、そしてパナソニックと、経営者としてのキャリアを文句なしの実績で積み上げ、家庭人としては4人の子供を育てる母親。

　本書には、まさにスーパーウーマンとしか言いようがない波乱万丈の半生記と、彼女が新しい可能性を切り拓いていく過程で何を考え、学んでいったかが活写されている。

　私はパナソニックの社外取締役として、また友人として、著者と関わりを持ってきた。傍からは天才にしか見えないかも知れない。しかしYokyが、実はとても理詰めに、目的に向かって努力と工夫を着々と積み上げてきたこと、それは一人の研究者としてだけでなく、集団を率いるリーダーとして、あるいは家庭人としても、を私は感じていたし、本書を読んで、学ぶこと、学んだことを試すこと、そこからさらに改善、向上することへの暑苦しくないクールな執念を改めて確認できた。

　もちろん才能は人それぞれ違う。でも持っている潜在力を最大限引き出すために彼女が提示している方法論には普遍性がある。多くの若者、取り分け自らの未来を選択したいと考えている女性に読んでもらいたい。今、Yokyが展開しているYohanaというサービスも、彼女自身が抱えた困難や悩みを踏まえ、働く女性、働く母親により多くの選択ができる未来を創るためのビジネスモデルなのだ。