半導体復活に向けた最後のチャンスだが…
─ では、国と企業それぞれの役割をどう考えるか。かつてエルピーダメモリには公的資金300億円が注入されたものの2012年に破綻しており、政府が関与するとうまくいかないという声も根強いです。
A 昨今の米中対立を考えたら、世界的なサプライチェーン(供給網)を見直す上で、日本に半導体産業を誘致することは非常にいいこと。5兆円が必要だと言われるラピダスの新工場設立には更なる政府支援も必要になってくるでしょうし、課題はありながらも各国が半導体産業の囲い込みを行っている上では、日本政府の支援は必要で、日本も半導体復活に向けた最後のチャンスだと思います。
とはいえ、わたしは国の関与はあっても、主導する必要はないと思います。民間企業の中で世界で戦える有力な企業だと思ったところに補助金を出していけばいい。これだけ時代の変化が早くなると、どうしても国の主導では判断のスピードが遅くなる。あくまでも主役は民間。民間を後方から支援することが国の役割だと思います。
C 国が関与して成功した事例が少ないとはいえ、日本よりコストが安いと言って韓国や台湾に移っていったものを、国の経済安全保障という観点で日本に戻そうというのだから、国の補助は必要です。ただ、国も延々と補助金を出し続ける余裕はありません。
国やラピダスがやるべきことは、半導体をつくった後にどこへ売っていくか。わたしは最先端の半導体が無ければつくれないような最終製品が一体どれだけあるのかが疑問です。
B そこだよね。つくった後の戦略が見えてこない。米アップルのような巨大企業が最先端の半導体を使って、どういう最終製品をつくるかというところまで育てていかないと、半導体の需要が完全に確保されなくて、持続的な利益が出ず、国も延々と補助金を出し続けるしかなくなってしまうように思う。
C エルピーダは政府の支援が遅すぎたと思います。エルピーダが誤算だったのは、主要顧客であった日本の電機メーカーが一気に凋落し、最終製品の作り手がいなくなってしまったことも大きいのではないか。
その点、韓国サムスン電子は自社でテレビやスマートフォンなどの最終製品をつくり、しっかり半導体を使える場所を自らつくっていた。国が関与するのであれば、そこまでしっかり考えてほしいと思います。
B もちろん、経済安全保障や供給網など、課題は山積しているが、官民ともに日本が本気でこれから半導体で世界と勝負していくのか、覚悟が求められているということだね。