2023-08-24

FRONTEO社長・守本正宏「医薬品の製品化に至る確率は2万~3万分の1。これをテクノロジーの力で解決したい」

守本正宏・FRONTEO社長


言語処理AIを活用して創薬支援をしていこう



 ─ では、そのライフサイエンス事業の可能性について、説明してもらえますか。

 守本 一般的な医薬品の研究開発では、標的分子と言って、薬を作用させるヒトの遺伝子、いわゆる標的分子を探し、その疾患メカニズムを推定することから全てが始まります。これが創薬の成功を決めると言われており、この標的分子探索と疾患メカニズム推定が非常に難しいのです。開発初期段階で有望と見られた標的分子のうち、実際に医薬品としての製品化に至るのは、わずか2万分の1とか、3万分の1と言われています。

 ─ それくらい確率が低いものであると。

 守本 はい。通常どうやって標的を見つけるかというと、医学論文などを読んで疾患の推定メカニズムを描く仮説生成を行います。つまり、なぜその疾患が起こるのかという仮説を立てていくのですが、それには、とにかく膨大な量の論文を読み込まないといけません。

 そこで、これをどうにかテクノロジーで解決できないかと。論文を読むのはつまり、自然言語解析ですから、自然言語処理AIを活用して創薬支援をしよう、というのが当社のライフサイエンスAI事業です。

 豊柴が当社に来てくれたのも、まさにそれが理由で、創薬研究において、標的分子の候補を絞り込むためのプロセスは未だに効率化されていない。研究者の個別の努力に依存しているのが現状で、豊柴は長年、創薬研究に携わる中で、これが大きな課題だと感じていたのです。

 ─ もともとリーガル向けのAIだったものを、創薬に応用することはできるんですか。

 守本 できます。言語は社会のあらゆる場面で使われており、自然言語解析技術は様々な分野に応用可能です。更に、普通のAI解析では、AIはユーザーが調べたいことに関係のある文字や論文を引っ張り出してきて「これです」と答えを並べます。一方で、当社のAIは更に高度な、例えば、ある疾患の名前を入れると、10分くらいでその疾患に関連する遺伝子・分子の関連図を提示してくれます。

 加えて、当社のライフサイエンスAI事業では、AIと創薬の両方に精通した研究者チームが成功確率の高い標的分子を見つける独自の解析手法を開発しています。

 解析手法はいくつか確立されていますが、例えば、その一つは、ある標的分子について疾患関連性が高そうだと思ったら、それを仮想的にノックアウト(破壊)して、疾患の発症や進行に関わる遺伝子ネットワーク上の他の遺伝子への影響を検証することができます。

 通常、仮説が正しいかどうかは、マウスを使って一つひとつ実験して確かめたりするのですが、当社の創薬研究者はAIを駆使して仮想実験を短期間に何回も行える。これはおそらく世界中、どこにもできないことで、豊柴をはじめ優秀な研究者が当社に参集してくれたことの成果が、この1年くらいで一気に花開こうとしているところです。

 創薬は成功率がとにかく低いので、その課題を解決することが、研究の効率化や発展、ひいては患者さんによい薬を早く届ける上で重要なのです。

続きは本誌で

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