2023-09-12

【あおぎり協同組合】山下浩幸代表理事「外国人材の現地での教育から送り出し、母国帰国まで一気通貫体制で」

山下浩幸・あおぎり協同組合代表理事(アクセルジャパン社長)



カンボジアで自前の学校

 ─ 国ごとに事情が違うのですね。しかし、日本は受け入れをどうするかについて真正面から考えなければなりません。

 山下 その通りです。今後、日本では毎年労働者が40万人足りなくなるとも言われています。おそらく技能実習生は毎年15万人から20万人弱ぐらい入っていると思います。しかし、コロナ禍で、その間、受け入れが落ち着いたのですが、昨今のインバウンド増加で急激に、技能実習生や特定技能外国人が増え始めているのが現状です。

 ─ 産業界共通の課題ですね。あおぎりグループは海外で自前の学校を運営していますね。

 山下 はい。2013年からカンボジアで日本語学校を運営しています。ここでは語学以外にも通学時の挨拶をはじめ、毎朝一斉に校内清掃も行っています。清掃終了後にはラジオ体操と朝礼を行い、清掃が不十分だったときには朝礼で生徒たちが報告し合い、もう一度清掃してから授業が始まります。

 カンボジアの人たちは、ベトナム人やミャンマー人とも異なり、地味な仕事や農業、建設など、肉体的に大変な仕事でもコツコツ頑張るんです。その国ごとの産業特性もあるだろうと思います。一方で、ミャンマーの人たちは日本語の上達が早く、介護施設や接客を必要とする企業からのニーズが多いです。


あおぎりグループが自前で運営しているカンボジアの日本語学校

 そういった真面目で一生懸命な我々の学校の生徒を面接してもらって採用いただいています。これも現地での教育から送り出しなどを一気通貫で行えているからであり、当グループにはそれらに精通するメンバーがいます。

 ─ カンボジアやミャンマー以外の国々はどうですか。

 山下 例えば、パキスタンは日本語の文法と並びが近いので、日本語の習得は早いと思います。東南アジアの中でもインドネシアに次いで人口が多いですし、今後の広がりの可能性は大いにあると思っています。

 インドネシアはベトナムに次いで、技能実習生の人数が多い国です。インドネシアは経済成長に伴って、事業意欲が高い若者が増え、海外でお金を稼いで、自国で一旗揚げたいという人材がたくさん日本に来始めていると感じます。

 ─ 日本で働きたいと思う外国人がいる一方で、日本企業も受け入れようとしている。あとは法整備が課題ですね。

 山下 技能実習という名称がどうなるかは別にして、技能実習を特定技能のような扱いにするけれども、すぐに転職されると困るので、一定期間は1カ所に留まってもらうと。その後は特定技能として、どこに行っても構わないという形を政府は考えているのではないでしょうか。

 当グループが加盟する全国約70団体、企業約6000社、約3万人の実習生を包括的に束ねる「国際連携推進協会」からも、今回の法改正について地方の中小企業のことを考えて欲しいと、政府への陳情活動や提言を行っています。

 ─ これらの仕組みの管轄官庁はどこになるのですか。

 山下 在留資格については法務省ですが、労働者として労働関係法の観点からも、引き続き厚生労働省も絡むと思います。


日本を加速させる手伝いを

 ─ ますます役割が大きくなりますね。そもそも山下さんがこの事業を始めた経緯とは。

 山下 大学卒業後、広島の輸入会社に入社し、05年に「アクセルジャパン」という派遣会社を立ち上げました。自分が生まれて以降、日本の人口動態が減っていくことを知り、日本に外国人の労働力を供給することで日本を加速させるお手伝いをしたいと思ったのがきっかけです。

 やはり課題も答えも現場にあると思っていましたので、アクセルジャパン設立後、07年にはフィリピンに現地法人を立ち上げ、その当時から海外に拠点を持って根っこからやろうと動いてきました。当時から誰かに任せるのではなく、自分で責任を持った事業をするためには根っこからやりたいという思いを持っていたのです。

 ─ 順調だったのですか。

 山下 08年のリーマン・ショックの翌年は派遣切りで大変でした。広島には造船や縫製、自動車関連、食品などの企業が多くありましたので、当時は外国人専門の派遣会社が約80社あったのですが、09年末には当社を含めて5社しか残っていませんでした。他は全て廃業していました。

 そこから18年が経ち、今はとても手応えを感じているところです。

 ─ その中でも、どんな点で遣り甲斐を感じますか。

 山下 私はこれまで、多くの技能実習生が来日し、良い意味で人生が変わる姿をたくさん見てきました。実習生の中には家族の生活も背負っている若者もいます。そういった人たちの人生が好転し、家族も喜んでいる姿を見たときが最も遣り甲斐を感じる瞬間なんです。

 近年、ダイバーシティという考え方が重要視されています。当グループは、人種や宗教、国籍、文化の違いを受け入れ、多様な人材の活躍に向けて、これまでも、そしてこれからも、貢献できるように頑張っていきたいと思います。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事