2023-09-21

《日本最大の発電会社》JERA・奥田久栄が目指す「CO2を排出しない発電所づくりを!」

奥田久栄・JERA社長




再エネ企業を相次ぎ買収



 JERAは2020年10月に『JERAゼロエミッション2050』を策定。2050年までの30年間で再エネの開発に加え、前述したように、火力発電の燃料を石炭やLNGから、アンモニアや水素に転換していくことで、エネルギーの安定供給を果たしながら脱炭素化を実現しようとしている。

 前述した通り、JERAは国内発電量の3割を占める日本最大の火力発電会社。すでに約1兆円を投じて、古い設備を新しい設備に入れ替えるリプレースを実行してきた。現在、同社が急ぐのは、ゼロエミッション火力の実現と再エネの開発だ。

 今年に入って、JERAは3月にベルギーの洋上風力発電事業会社パークウィンドを15.5億ユーロ(約2200億円)で買収することを発表。5月にはNTTグループと共同で国内の再エネ事業会社グリーンパワーインベストメント(GPI)の買収を決めた。買収金額は非公表ながら約3千億円と見られており、国内の再エネ企業を巡っては最大規模の買収となる。

 矢継ぎ早の巨額買収を続ける狙いについて、奥田氏は「再エネの中で洋上風力は大きなオプションになってくるので、自分たちで提案し、自分たちでつくりあげていく能力を持たなければならない。欧州に実績のある会社の力を借りた方が早いということでパークウィンドを買収し、人・技術・ノウハウを一気に手に入れられるだろう。GPIには北海道・石狩沖での開発実績があり、日本やアジアのローカルな問題を克服していくことができれば」と語る。

 同社は2025年度に500万キロワットの再エネ開発という目標を掲げている。現在の発電容量は約320万キロワットで、一連の買収により500万キロワットの達成は射程圏に入ったという。

 2023年3月期の同社の売上収益は4兆7378億円(前年同期比71.1%増)、当期利益178億円(同約3.1倍)と増収増益(燃料費調整の影響を除いた当期利益は2003億円)。この売上は東京電力ホールディングスの7兆7986億円に次ぐ規模。JERAは中部電力(3兆9866億円)や関西電力(3兆9518億円)を凌ぐ国内2位の電力会社だ。

 しかし、奥田氏は「われわれは電力会社ではない」という。

「JERAは『世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する』というミッションを掲げていて、それを世界に提供するというのが、従来の国内電力会社とは違うところ。洋上風力や再エネもやりながら、ゼロエミッション火力もやっていかないと、脱炭素の達成は現実的ではない。最先端のソリューションを提供するため、いろいろなオプションを提供できる会社になりたい」と語る奥田氏。

 足元の安定供給と脱炭素の両立をいかに図るか。エネルギーの移行期にあって、現実解の模索を続ける奥田氏である。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事