2023-10-27

岐路に立つ日本経済、経営者に求められる覚悟

日本経済は岐路に立っている

円とポンドの違い

「今の為替相場を見て感ずるのは、実力以上の円安ということ。それは海外を訪ねていて宿泊費、食事代でまさに痛感します」と某経済リーダーは語る。

 同リーダーは最近、英国ロンドンを訪ねて、それを痛感し、「それにしても、英国はEU(欧州連合)離脱や輸入物価の上昇で厳しい状況ですが、ポンドの価値を何とか維持。実力以上のポンドという感じですね」という感想を付け加える。

 IMF(国際通貨基金)の予測によれば、米国経済は2023年の1.8%成長から、24年は1.0%成長(今年7月時点での予測)。ユーロ圏は0.9%から1.5%に成長するが、高インフレに悩む状況。日本はといえば、23年の1.4%成長から24年は1.0%に減少する。

 原材料高騰を招くウクライナ危機が続く中、日本がコロナ禍を切り抜け、経済成長を求めるとすれば、イノベーションを起こして労働生産性を高め、潜在成長率を高めること。人手不足が深刻な今、大事なのは女性と高齢者の中で働ける人達の余地をさらに広げる努力も大事。

「日本経済は活性化する余地は十分あると思います。ただし、イノベーションなどの努力を怠ると、日本の賃金は円安などもあって下がってきているので海外から魅力的な働き場所ではなくなりつつある」

 山口廣秀・日興リサーチセンター理事長はこう、日本の課題を指摘しながら、「その意味でも、賃上げできる状況へ向かって、努力することが必要」と叱咤激励する(本誌70周年記念企画インタビュー参照)。

 1ドル=148円台の円安をどう見るか。10余年前の民主党政権時代、〝六重苦〟の中で原油高、高い電気料金、労働・環境規制の不十分さとともにやり玉に挙げられていた円高。

 その頃と比べれば、円の価値は約半分に凋落。この円安による影響はプラス・マイナスの両面ある。円安でグローバル展開する企業の決算は実力以上に利益が膨らむ。一方、原油や食料の輸入高などで国民の消費生活は圧迫される。

 こうした矛盾に加えて、外国人労働者も日本に魅力を感じなくなっている。人手不足で介護・福祉、建設、その他全産業で外国人労働を増やそうという中、今日本に逆風が吹く。

 お隣・中国も今、景気後退に悩む。中国GDP(国内総生産)の3割を占めると言われる不動産事業のバブル崩壊に直面。地方政府も財政難に陥り、何より企業や個人に融資をしていた諸金融機関が資金繰り難に陥っており、中国の不況が世界に与える影響も無視できない。


求められる覚悟 日本はどう動くべきか?

 人口減、少子化・高齢化が進み、ただでさえ需要不足に陥りがちな日本だが、社会課題はそれこそ多数ある。DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)活用による人手不足への対応、あるいは半導体産業復活に懸ける官民連携、食料自給率の向上といった社会課題を成長に結びつけるという発想が必要。

「はい、マクロ的なことだけで萎縮していたのでは、企業経営は成り立たないですね。ですからリスクは様々な分野にあるし、そういったものを頭に置きながら、やはりそこをサバイバルしていこうとすれば、取れるリスクは取って行くという覚悟だろうと思います。日本経済にリスクを取る余地はあるし、それを見つける余力はあると思います」と前出の山口氏。

 経営者に、覚悟が求められる時である。

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