2024-03-13

ボルテックス社長兼CEO・宮沢文彦「オフィスビルを借りるだけでなく、『買う』という発想があっていい。不動産を活用した社会課題解決を」

宮沢文彦・ボルテックス社長兼CEO




ビル賃貸業の持つ「安定性」に着目して

 ─ 改めて、宮沢さんが起業した時、どういう存在を目指そうと考えていましたか。

 宮沢 起業する時には「会社はどうあるべきか」、「自分が顧客だったら何を求めるか」を考えていました。

 自分が顧客として企業に要求するのは、第1に「存続」です。非常に高いクオリティのサービスを、未来永劫提供し続ける存在です。倒産したから終わりましたではお客様は困ってしまう。規模の拡大は顧客サイドからはあまり関心がなく、それよりも良いサービス、高い付加価値を提供し続けて欲しいということだと思うのです。

 私は証券営業をしてきた中で、世の中でどういう企業が強いか、企業価値を伸ばしているかを見聞きしましたし、上場企業であれば時価総額、非上場企業であれば純資産や含み益といった企業価値がどのように増えていくのか、いろいろ調べました。

 その中で非上場、同族系、少人数、国内という企業で実質的企業価値が1000億円以上に達した会社の数は多くありません。しかし、ビル賃貸事業者は到達しているケースがあります。

 当社も、保有物件金額、固定試算で600億円超ありますが、その約3分の2は不動産保有が作り上げたものです。そして、我々の売上高の9割を占める「区分所有オフィスⓇ」の分譲事業は、3分の1くらいなのです。

 ─ 不動産保有の価値は非常に大きいと。

 宮沢 ええ。ただ、ビルを所有しているオーナーは、代替わりの時にファンドなどに売却することが多い。また、不動産デベロッパーの再開発に地権者として協力して、フロアの一部を数百億円単位で保有していることもあります。しかし、名前は出てこないんです。ですから今はビル保有については大手の寡占状態になっていっています。

 それでも22年の時点で企業価値の大きさ、100年以上続く企業の業種のナンバーワンはビル賃貸業です。安定度、強さは全事業の中でもトップレベルと言っていい。

 土地の所有権は、江戸時代であれば江戸幕府が持っていた。それが近代国家、民主化すると所有権が分散していきました。住宅地、マンションであれば分譲されますが、商業地はどうしても大手が寡占してしまう。

 ですから、日本企業が東京でビジネスをしようという時、およそ9割が借りるという選択肢しかありません。これは歪で、放っておけば反民主的な富の偏在が起きてしまう。米国を見ても、一部の富裕層が富のほとんどを所有していることで分断を生んでしまっています。

 ─ ボルテックスは、日本で不動産所有の民主化をしたいということですね。

 宮沢 そうです。東京の不動産所有権が人の手から離れていくところを民主化し、分断や富の偏在を防ぐというのが我々のパーパス(存在意義)です。

 この30年間、日本ではビル賃貸事業を不動産投資と勘違いして忌み嫌う傾向がありましたが、今の時代は本業以外で、それに連動しない収益部門を持たなければ本業周りのリスクを受けてしまうという新しい経営の考え方が求められています。

 この新常識を、我々は「100年企業戦略」という言葉とともに打ち出してきているのです。

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