1日の削減時間は3時間以上 実際にSPIDERPLUSを導入した企業の1日の削減時間は平均3時間。1人当たりの月間導入効果は約20万円だ。大多数のユーザーが月に60時間以上の業務効率化を実現している。中には「1人で3人分の作業をこなせるようになった現場もある」(伊藤氏)ほどだ。
しかも、導入企業も大手ゼネコンとサブコンを含めて約1800社、6万人以上が利用。中でもゼネコンから空調衛生設備や電気設備の施工を請け負うサブコンでは「トップ100のうちの95%はSPIDERPLUSを導入している」(同)。
つまり、ゼネコンから空調衛生設備や電気設備の仕事を受けるサブコンにしてみれば、SPIDERPLUSを導入していない現場は避けたいということになる。人手不足が顕著となり、納期を間に合わすためにもサブコンの協力が必須なゼネコンも導入するようになるわけだ。
一方で、SPIDERPLUSと類似した製品をゼネコンが開発しようとすると、囲い込みの思想から、どうしても自社仕様・自社規格になってしまう。
伊藤謙自・スパイダープラス社長CEO その点、スパイダープラスは、鴻池組や長谷工コーポレーション、きんでん、高砂熱学工業などの建設会社や専門工事会社と専門チームを組んで開発に当たっている。また、約13年にわたって「当社のエンジニアが建設現場に足を運び、現場で働く人のニーズを聞いて商品に落とし込み、機能を磨き上げてきた」と伊藤氏は語る。
同社は建設資材の商社で断熱材の販売に携わっていた伊藤氏が1997年に独立して創業。自ら建設現場で働いていたことで、建設業界のIT化の後れを感じ、業務の効率化を図るために、自分たちでITツールを作ることにした。2021年には建設DX銘柄として初めて東証マザーズ(現グロース)に上場。
23年12月期の売上高は33億円を見込み、利益面では先行投資で赤字を余儀なくされる中でも時価総額は約250億円。25年には通期黒字を目標に掲げる。伊藤氏は今後、数万社とも言われる地方の中小建設業者の獲得を目指し、「まずは契約者数とユーザー数を増やし、トップラインを上げていく」(同)方針だ。
3K(きつい、危険、汚い)のイメージが強かった建設業。デジタルな要素を組み込み、「スマートに仕事ができる世界をつくりたい」と話す伊藤氏の建設現場変革ビジネスである。