2024-03-04

【政界】「国の基本像を描け!」との国民の声 問われる国会議員の使命と役割

イラスト・山田紳



派閥から政策集団へ

 一方、存続する方向の麻生派と茂木派は総裁選に向けた戦略の練り直しを迫られている。

「変えるべきものは何か、変えてはならないものは何かについて今しばらく時間をかけ、しっかり考えをまとめていきたい」。麻生は2月1日に国会近くの麻生派事務所で開いた総会で、そう語った。麻生派はこの日、情報の交換や伝達、共有をするため、従来通り週1回の会合を続けていく方針を確認した。

 麻生派は退会者が元防衛相の岩屋毅にとどまっている。ただ、2021年の前回総裁選に麻生の反対を押し切ってデジタル相の河野太郎が立候補し、麻生派として支持の一本化を見送らざるを得なくなった苦い経験がある。河野は自身が主宰する勉強会「火曜会」を引き続き開催する方針とされ、今秋の総裁選への出馬も伺っている。

 そうした中で麻生は1月下旬、福岡県内での講演で、外相の上川陽子について就任直後の国連総会で個別会談を数多くこなしたことなどに触れ、「あんなことができた外相は今までいない。新しいスターがそこそこ育ちつつある」と手腕を高く評価した。

 講演は上川の容姿に関する発言が波紋を広げたが、他の議員を褒めることの少ない麻生が、上川を持ち上げたことから永田町では「麻生派も一枚岩になれるか微妙な時期だし、総裁選に向けて新しい〝カード〟を握ろうとしたのではないか」といった憶測を呼んだ。

 茂木派も麻生派と同様に「政策集団」として存続する方向になった。「資金力と人事への影響力で人数を増やすという『数の力』の派閥はなくなる。解散も解消もあまり違いがない」。茂木は民放BS番組で強調している。

 ただ、党選対委員長の小渕優子が茂木派を退会したのに続き、「参院のドン」と呼ばれた元官房長官・青木幹雄の長男で参院議員の青木一彦や参院議員会長の関口昌一らが相次いで退会し、茂木の求心力低下が指摘されている。

 茂木はBS番組で、総裁選について「派閥やグループに依存した候補は勝てない」「これから群雄割拠の時代に入る」などと語った。自身は総裁選の対応について多くを語らず、党内の様々な動きを見極める構えのようだが、出馬への道筋は描けていない。


急がれる党内議論

 小渕や関口が茂木派を抜けた理由は、1989年の政治改革大綱に「党幹部や閣僚の派閥離脱」が明記されていることだった。茂木は、幹事長として「政治改革大綱を想起する」ことを掲げた政治刷新本部の中間取りまとめに沿って党内議論を加速化させるため、刷新本部にワーキングチーム(WT)を設置した。

 WTは①政治資金に関する法整備の検討②党機能・ガバナンスの強化③党則などの見直し─の3つからなる。ここでは会計責任者らが違反をした場合には、国会議員の責任も問う「連座制」導入の是非が焦点となりそうだ。厳しい政治資金問題の再発防止策が打ち出せず、派閥に頼らない人事、総裁選びを実現させる新しい体制が築けなければ、政治の信頼回復は遠のくばかりだ。

 三人寄れば派閥ができる─。政治不信を払拭するための「処方箋」づくりに時間をかけていては、秋の総裁選に向けて様々な思惑が渦巻く中で、旧態依然とした派閥がゾンビのようによみがえってくるだろう。

「国の基本像を描け!」─。ある経営者は足元の政治情勢を受けてこう訴える。米中対立が続き、米国大統領選挙の行方次第では国際情勢も混乱が予想される。また、国内では肝心の経済再生をはじめ、持続的な賃上げやデフレ脱却、社会保障制度改革など政策の根本課題の解決は先送りされたままだ。岸田や茂木だけでなく、議員一人ひとりの覚悟が問われている。
(敬称略)

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