2024-03-21

森ビル社長・辻 慎吾の「街をつくり、街を育む!」

辻慎吾・森ビル社長

「僕らは街をつくるだけではなくて、その後の街を育むことを一生懸命やるし、そのノウハウもあります」─。森ビル社長・辻慎吾氏は、街をつくることと育てることはどちらも重要と語る。2023年11月には、約300人の地権者と共に35年かけて開発してきた麻布台ヒルズがオープン。この3月には商業施設などが入る『ガーデンプラザ』も開店し、完全オープンとなる。開発区域面積約8.1ヘクタールで、わが国最大。年間入場者数は約3000万人が見込まれ、早くも東京の新名所になった感。同社はこれまでアークヒルズ、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズと“街づくり”を手がけてきたが、「街を育てていくこともわれわれの大事な仕事」と辻氏は強調。例えば、開設から20年余が経つ六本木ヒルズを引き合いに、「20年の中で、22年のクリスマスイヴが過去最高の人出なんです。街の鮮度は落ちてきても、人の絆というものが上がっていきます」と辻氏。街と街をつなぎ、人同士の絆を強める中で、東京の都市間競争力を高めていきたいという。日本再生につながる街の育み方とは─。


東京の磁力を生み出す街づくりを!

「これだけ大きな街づくりですからね。東京の磁力を生み出す1つになってほしいし、都市間競争に勝つための1つの大きな力になってほしいという思いもあります。こうした街が誕生するというのは、自分たちがやってきたことを世の中に出すことができるという意味で、ものすごく嬉しいことです」と森ビル社長・辻慎吾氏。

 東京・港区の『麻布台ヒルズ』が昨年11月オープンして3か月。高さ330メートルの『森JPタワー』は文字通り天高く聳え立ち、麻布台一帯での存在感が際立つ。

 同ヒルズには、内外の企業が入居するオフィス棟や住宅棟、商業施設がある。また、慶應義塾大学が予防医学のための拠点を構え、予防医療センターを開設しているのも話題だ。

 森ビルの街づくりは、他の大手ディベロッパーの街づくりがオフィス棟の建築、もしくはオフィス棟と商業施設の建築が主なのに対して、必ず住まいの要素を取り入れているのが特徴。

 つまり、『職・住・遊』のコンセプトで街づくりを進めてきたということだが、最近はそれに〝学ぶ〟、〝健康〟、〝憩う〟などの要素が加わる。

 麻布台には、都心初のインターナショナル・スクールや、先述の最先端医学による予防医療センターが開設され、緑いっぱいの中央広場(約6000平方メートル)が人々の憩いの場になっており、『グリーン&ウェルネス』を合言葉に、都市機能の進化を図っている。

 これまで首都圏では、街づくりが、働く場所と住む場所を分ける形で進められてきた。

 東京の中心部(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区など)にオフィスをつくり、住むのは郊外で、そこから電車やバスで通勤するという生き方・働き方が続いてきた。

 その中で、森ビルは早くから、『職・住・遊』を包摂したコンセプトで、住むのも働くのも同じ地域内でという開発プロジェクトを手がけてきた。

 また、住むための快適さ、人らしい生活を送るにはと、『都市に緑を』という考えを取り入れ、緑地を造成するのも特徴。

 今回の開発区域面積は約8.1ヘクタール。ここに先述の森JPタワー(かつてこの場所に旧郵政省の本庁舎ビルがあり、この名称となった)、レジデンス(住宅)棟が2つ、そしてガーデンプラザ(A、B、C、D棟)という構成。

 ガーデンプラザには住宅、商業施設、その他にギャラリーなどが入居する。森JPタワーの地下部と連結して各種マーケットが運営され、まさに職・住・遊がつながっている。

 また、インターナショナル・スクールの『ブリティッシュ・スクール・イン東京』(英国式教育カリキュラム、児童・生徒数約700人)も開設された。この種の学校はこれまで都心部になかったため、東京の国際競争力向上の一環としても注目される。

 この麻布台ヒルズ開設の手応えはどうか?

「ものすごく、手応えを感じています。開設の記者説明会の当日は、プレス関係者が約350人も来てくれました。海外のメディアを含めてね、普通は高さ330メートルのタワー建設といった話になりがちなんですが、そうではなくて、わたしたちが進める〝グリーン&ウェルネス〟といった緑の話がメインでしたね」と辻氏は都心での緑地開発が話題になったことを喜ぶ。


四季を感ずる街を!

 四季を感ずる街づくり─。同社は約8.1ヘクタールの開発区域に2.4ヘクタールの緑地を用意。中央広場(約6000平方メートル)では池や、草木が人々の目を楽しませる。

 樹木の種類は約180種類。地被植物(地表面を覆い、地肌を隠すために植栽する植物)を含めると、約310種類に及ぶ。

「麻布台では果樹園をつくったり、いろいろな緑を入れています。桜もいろいろな種類を入れており、2月から5月位まで咲く。河津桜が一番最初に咲いてね。いろいろな種類の桜があって、広葉樹もいっぱいある。木は育ちますから、今は持ってきたばかりだけど、2年、3年とどんどん大きくなっていきます」

 緑を取り入れた街づくりだ。

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