2024-03-28

【政界】孤立化しつつある岸田首相の進退は?国民の審判が下る4月の衆院補選

イラスト:山田紳



4月補選はいばらの道

 政倫審が好感を持って受け入れられなかったことで、自民党にとっては4月28日投開票の日程で行われる東京15区、島根1区、長崎3区の3つの衆院補欠選挙に暗雲が漂う。

 岸田は予算案の衆院通過の直前、周辺に「まずは予算を確実に成立させる」と語った。一時は自民党内にも「予算成立を花道に退陣だろう」(閣僚経験者)という声があったが、岸田には、まったくその気がない。

 自民党の不祥事が完全に解決していない中での4月解散説もあるにはある。補選前に衆院が解散されれば、補選は回避され、総選挙で自民党が勝利すれば政権を安泰させることができるという見方だが、今となっては、さすがに現実的ではないだろう。

 岸田は、ひとまず4月補選で勝負するしかないことになりそうだが、裏金問題で自民党に所属していた谷川弥一が議員辞職したことに伴う長崎3区は不戦敗の様相だ。前議長の細田博之の死去に伴う島根1区も厳しい戦いを強いられている。

 島根は自民党有数の金城湯池である。小選挙区制となった1996年以降の選挙はすべて細田が当選し、中選挙区制だった島根全県区時代も自民党系候補が常にトップ当選だった。

 自民党は今回、財務官僚だった新人の錦織功政が立候補するが、細田の世界平和統一過程連合(旧統一教会)との関係やセクハラ問題に加え、細田が細田派として会長を務めていた安倍派の裏金問題も直撃し、「〝細田ショック〟で地元が一致結束できていない」(自民党島根県連幹部)という。立憲民主党が擁立する亀井亜紀子は元職で、同党が総力戦で臨む構えだ。


注目される小池の動向

 そんな中で唯一、脈がありそうなのが東京15区だ。自民党に所属していた元法務副大臣の柿沢未途が江東区長選を巡る公職選挙法違反(買収など)で逮捕、起訴となり、辞職したことで行われる。

 一連の事件による江東区長の辞職に伴い昨年12月に行われた区長選では、東京都知事の小池百合子(都民ファースト特別顧問)が主導した元都部長の女性候補を、都民ファのほか、自民党や公明党が推薦。立憲民主党などが推した候補らを破り当選した。

 今年1月の東京・八王子市長選でも、自民、公明が推薦した元都局長の男性が当選した。都民ファは推薦こそしなかったが、小池自身が応援に入り、裏金問題の逆風をはねのけた。

 自民党都連には「もう小池さんに足を向けて寝られない」との声が広がっている。「江東区長選方式」ともいえる手法を、選挙区域が全く同じ4月の東京15区補選で適用できれば、自民党の「勝利」に位置付けられるという目算だ。

 永田町では、低迷する岸田を脅かす有力な後継候補が不在の中、小池が自ら東京15区補選に出馬して勝利し、国政復帰した上で9月の総裁選を勝ち抜き、首相を狙っているのではないか、との臆測も広がる。

 とはいえ、小池も今年7月で72歳。そもそも2016年の都知事選で自民党と敵対して出馬し、17年の衆院選では希望の党を立ち上げて対立した経緯がある。自民党に戻ったところで、派閥が事実上解消された党内で小池を本気で支えるような勢力も支持基盤も見当たらない。健康不安説が定期的に浮上しては沈む小池が7月の都知事選の立候補さえ見送るのではないかともささやかれる。

 いずれにせよ、今の自民党が窮地であることに変わりはない。岸田は3月8日で首相在職887日となり、今太閤ともてはやされた田中角栄を抜いて戦後の首相の通算在職で歴代9位となった。まがりなりにも安定してきた政権が続くのか、それとも首相交代につながって再び政界が混迷するのか。

 4月の補選は、単なる一部地域の補選ではなく、日本の今後を左右することにもなる。

 (敬称略)

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