2024-04-04

「都心では二度と出てこない価格」 高倍率での競争が相次ぐ「晴海フラッグ」への期待と課題

東京都内に新たな街として誕生した「晴海フラッグ」(写真はタワー棟を含む完成予想図)



 その市況を見てみると、不動産経済研究所が発表した23年の東京都区部のマンション平均価格は、前年比39.4%上昇して1億1483万円。初めて1億円の大台を超えた。

 また、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンション平均価格も、前年比28.8%上昇の8101万円。3年連続で最高値を更新した。

 晴海フラッグは1戸当たりの面積が大きいため、坪単価は安くとも総額は決して安くはない。しかし「家族持ちで、同じような面積のマンションが、同じようなグロスで買えるかというと難しい状況になっている」(佐久間氏)こともあり、購入の障害にはなっていないようだ。

 ただ、価格の安さが一般のファミリー世帯の購入の妨げになっている面があった。23年5月までに販売した17棟では、転売を目的とした投資家が複数戸に申し込むなどしたこともあり競争がさらに激化。前述の倍率はその反映となっている。

 そこで、23年6月以降販売のタワー棟2棟は1名義で2戸までの申し込みに制限。それでも平均倍率は15倍、最高倍率は142倍という人気ぶり。

 唯一のウィークポイントとも言えるのは交通利便性。鉄道の最寄り駅が大江戸線勝どき駅で、最も近い棟でも徒歩16分表記。主要な交通インフラは「東京BRT(Bus Rapid Transit=バス高速輸送システム)」となる。順調ならばJR新橋駅まで15分程度で結ぶ。入居が始まったばかりの今はスムーズな乗車が可能だが、今後本格的な入居が始まってからは増便など、様々な調整が必要になる。

 ちなみに2040年頃開業を目指した臨海地下鉄新線構想もある。東京から銀座、築地、晴海、有明を結ぶ路線で、これが開業すれば交通アクセスは一気に向上する。

 ただ、今後のマンション市況を考えた時には様々な懸念材料がある。1つは建設費の上昇。今は資材の高止り、人手不足、さらには労働時間の上限規制を伴う「2024年問題」も控え、下がる見通しにはない。

 もう1つは日本銀行のマイナス金利解除などの政策変更で金利が上昇、住宅ローン金利に影響が及ぶリスク。全国銀行協会会長(みずほ銀行頭取)の加藤勝彦氏は「ただちに金利負担が重くなることはないのではないか」との見通しを示すが、金利は外部要因で動き得るだけに読み切れない。

 前述の通り、東京都内のマンション価格の平均は1億円を超えている。特に山手線の内側のファミリー向けマンションは1億5000万円程度でないと出物がなく「共働きのパワーカップルをもってしても買えるマンションがなくなっている」(佐久間氏)。しかも郊外部でも知名度のある駅の近くでは坪300万円から500万円という価格帯が付くなど高騰している。

 その意味で、今は賃上げの機運が高まっているが、様々な物価上昇に追いついていないという声は強い。この流れを継続させ、マンション価格の上昇にある程度追いつく状況をつくることができるかが、今後の需要動向を左右する可能性がある。

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