2024-04-16

JAL新社長・鳥取三津子の〝二正面作戦〟航空・非航空事業を共に伸ばす!

鳥取三津子・JAL新社長



「関係人口」の増加に注力

 そこでJALが次なる成長に向けた礎とするのが地域との関わりを持つ「関係人口」の増加だ。この領域で鳥取氏の手腕が試されることになるだろう。同社はコロナ禍で減便・運休が増え、搭乗機会が激減したとき、客室乗務員が地方に移住して地域活性化に取り組む活動を行った。「ふるさとアンバサダー」といわれるものだ。鳥取氏が客室本部長だったときに始めた。

 ふるさとアンバサダーは地域を巻き込むことで関係する人口を伸ばす一面を持つ。例えば、焼き物で有名な佐賀県伊万里市に出向していた客室乗務員が農産物にも注目し、凄腕シェフが最高食材を使った料理を手頃な価格で提供する飲食店「俺のレストラン」と協業し、東京・大手町にあるレストランで伊万里の食材と伊万里焼の器を楽しめるディナーイベントを複数回開催したりした。

 JALによれば、マイル会員のうち1年に2回以上同一地点に航空移動した関係人口は約110万人(23年度)、関係人口の同一地点への平均移動回数は4回(同)と試算。この440万人・回を30年には1.5倍の660万人・回に拡大させていく。そのときに客室乗務員の出向した経験が生きると考える。

 鳥取氏は植木氏が社長だった時代から将来の社長候補だったようだ。同社の社外取締役を務めた人物によると、「当時から植木氏は『将来有望な女性社員がいる』と言っていた。それが鳥取氏だったのだろう」と話す。

 10年の経営破綻までは同社の社長は労務や財務、経営企画などの間接部門出身者が当たり前だった。しかし、故・稲盛和夫氏(京セラ創業者)が再建に乗り出すと、それも変わる。整備士、パイロット出身者といった「派閥に属さない現場出身者」(同)が社長となり、今回の鳥取氏の登板へとつながった。

 鳥取氏に稲盛氏から何を学んだかと尋ねると「一見、志や情熱といった情緒的な価値を強調する印象が強かったが、それ以上に財務的な数字に対する姿勢が非常にシビアだった。経営者としての姿勢を学んだ」と回答。現実を見据えた経営を実践する。

「安全とサービスがキャリアのすべて」と話す鳥取氏。ライバル企業からは「お手並み拝見」と言われる中、客室乗務員出身者ならではの航空需要の掘り起こしに挑むことになる。

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