2024-05-09

GPIF理事長・宮園雅敬「公的年金という国民の将来基盤を支えるため、資産運用の高度化を進めていく」

宮園雅敬・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長

公的年金の安定は、国民の将来への安心につながる─。年金給付の財源の約1割を占める年金積立金。その管理・運用を担っているのが「世界最大級の年金基金」GPIF。2023年は暦年で過去最高の収益を出した。「プラスマイナスにどちらにもぶれ、常に動いている市場に合わせていく」と話すのはGPIF理事長の宮園雅敬氏。日本でも「金利がつく時代」が到来する中、GPIFはどのように運用を行っていくのか。

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日銀が政策変更 日本は「4つのゼロ」脱却

 ─ 2024年3月の金融政策決定会合で、日本銀行がマイナス金利解除を始めとする政策変更を行いました。このことをどう受け止めていますか。

 宮園 大きな節目だと思います。これまで日本には成長率、賃金、物価上昇、金利という「4つのゼロ」がありましたが、徐々にゼロを脱して、最後に残った金利がゼロではなくなったと。ファンダメンタルズ(経済の基礎的要因)が大きく動いている証左だと思います。今後は「金利のある世界」になっていきますから、世界でのマーケットの動きは注視していかなければいけません。

 ─ 日本にとっては1つのチャンスを迎えていると言っていいですね。

 宮園 そうですね。ただ、日米の金利差はありますし、ファンダメンタルズに合わせて、どのくらいの幅まで金利が上がるのかについては不透明な部分もありますからよく見ていく必要があります。

 ─ 改めてGPIFは厚生年金と国民年金の積立金、約220兆円の管理・運用を行っていますが、存在意義をどう捉えていますか。

 宮園 我々は国民からお預かりした保険料の中から、厚生年金と国民年金の給付の財源となる年金積立金をお預かりして、長期安定運用して増やすことで、年金事業の安定に貢献するという役割を担っています。法令でも「他事考慮の禁止」、つまり、年金の被保険者の経済的な利益以外のことは考えずに、年金積立金の運用に一筋にあたると謳われています。

 年金給付の財源の内訳を今後100年の平均で見ますと、保険料が約7割、国庫負担(税金)が約2割、そして年金積立金が約1割という割合になっています。

 公的年金は、多くの方にとって、亡くなるまでの生活の基盤です。終身受け取り、物価連動といった性格を持つ、いわば「長生き保険」です。我々は公的年金制度の一端をしっかりと担えるよう、運用をより高度にするよう努めています。

 ─ 2023年は暦年で約34兆円と、過去最高の収益となったそうですね。

 宮園 はい。これは市場環境がよかったことと、それに我々がきちんとついていくことができたことが大きかったと思っています。

 ─ 今後の運用方針について聞かせて下さい。

 宮園 この巨額の資金を長期運用していくことがどういうことかというと、日本及び世界の資本市場の成長は、債券の利子収入や、株価上昇といったリターンとなって実現します。資産運用によって、その果実をきちんと獲得し、年金積立金を増やしていくというのが一番のベースにあります。

 我々には名目賃金上昇率プラス1.7%という運用目標が与えられており、実質的な運用利回りと呼んでいます。公的年金の財政は100年スケールで策定されていますが、今後少子高齢化が進み、保険料の払い手が少なくなった時、その方々の負担が大きくならないように積立金を活用することになっています。

 名目賃金上昇率を目標にしているのは、年金のお支払いがそれに連動しているからです。この目標を実現するために最もリスクが小さく、効率的な方法で、長期的に運用することが求められており、そのために基本ポートフォリオを設定しています。

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