2024-05-06

野村不動産HD社長・新井聡の「新・不動産戦略」「東京・芝浦エリアの姿を変えていく」

新井聡・野村不動産ホールディングス社長グループCEO




東京・芝浦エリアを新しい街に

 そんな中、野村不動産HDは現在、新たな街の開発を進行中。それが「芝浦プロジェクト」。浜松町ビルディング(東芝ビルディング)の建て替えと、JR東日本が保有する「東海道貨物支線 大汐線用地」を活用し、オフィス・ホテル・商業施設・住宅を含む高層ツインタワーを開発。

 区域面積は約4.7ヘクタール、延床面積は約55万平方メートル、高さは約230メートル。「S棟」は25年2月竣工予定、「N棟」は30年度竣工予定となっている。

 野村不動産HDは25年に、この芝浦プロジェクトS棟に、現在の新宿野村ビルから本社を移転。約50年ぶりの本社移転となる。この社運を賭けたプロジェクトへの新井氏の思いはどうか。

「野村不動産は創業して67年。野村証券の資産管理会社からスタートし、住宅事業で成長した会社だが現在は多角化し、それらの事業も順調に来ている。ただ、さらに次の30年、50年を見据えた時にブレイクスルーが必要。不動産開発は建物にどう付加価値を付けるかが重要。芝浦プロジェクトはブレイクスルーの起点であり、次世代に野村不動産を引き継ぐ上でのターニングポイント。ここからまた、新しい野村不動産になっていく」

 現在はオフィスの色彩が濃いエリアだが、ここに新たなオフィスだけでなく、日本初進出のフランスのラグジュアリーホテル「フェアモント」が入り、商業施設ができるとなると、これまでとは全く違う姿の街となる。

「空だけでなく海や緑が見ながら働くことができる。単に働く場所を提供するだけでなく、そこで働くことで付加価値を高められる環境を提供するには、本当にいい場所」と新井氏。

 野村不動産はこの場所での働き方として、「ワーケーション」(ホテルやリゾート地で働く過ごし方)を実現する「トウキョウ ワーケーション」を提唱。この新しい働き方を、日本全国に発信すると同時に、それを世界に発信していく考え。

 すでに、本社移転を前に、様々な部署が交代でS棟のフロアで働く「トライアルオフィス」を運用し、新しい働き方に向けた模索を始めている。

 これまでの新宿とは大きく環境が変わるが、実際に芝浦で働いた社員からは「気持ちよく働くことができる」という声が挙がっている。しかし新井氏は「大事なのは気持ちよく働くことの先に、そこで生まれる付加価値が高まるか」と強調。

 実際に移転した後は、部門間の垣根を越えて、顧客に新たな価値を提供していくことを目指す。そのためにオフィス内の壁は極力取り払い、上下階を内階段で行き来できるようにするなどしたコミュニケーションが取りやすいオフィス環境の構築を進めていく考え。

 しかも、野村不動産が実践した新しい働き方を、今後この芝浦プロジェクトに入居する企業にも提供し、ビル全体の生産性を高めていく構想。「我々のテナントさんだけではなく、日本全体に提供できるようなものを創り出していけないかと考えている」と目指す目標は高い。

 また、前述の芝浦プロジェクトは、周辺エリア全体に好影響を与えることを目指すもの。竹芝地区、浜松町二丁目地区での再開発と連携し、一体感のある街づくりを目指す狙いで17年に「三地区連絡会」を立ち上げ、活動している。

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