2024-04-25

「退職者は裏切り者ではない」住友商事の『アルムナイ』活用戦略

1月に開催されたアルムナイと現役社員との交流会



アルムナイ・ネットワークは有効な人材獲得手法の一つ



 昨年、人材サービス大手リクルートが実施した調査によると、アルムナイ・ネットワークの構築に取り組んでいる企業は約3割。また、ネットワークを構築している企業は、従業員エンゲージメント(働きがい)が高い傾向にあるという。

 同社関係者は「構造的な人材不足が加速する日本において、アルムナイ・ネットワークは有効な人材獲得手法の一つ。離職者・退職者は一度社外に出たからこそ、視野が広がり、自社の強みも弱みも客観的に捉えられるようになる」と指摘する。

 4月からは、電機大手パナソニックグループもアルムナイ・コミュニティの運用を開始。アルムナイのネットワーク化は大企業を中心に少しずつ始まっているが、住商の場合、すでに事業化した事例も出ている。

 例えば、その一つが、小児向けにVR(Virtual Reality=仮想現実)を活用した弱視治療用アプリの開発だ。住商は同社を退社して起業したイマクリエイト社の社長・山本彰洋氏と共同で、既存の医薬品による完治が難しい疾患に対して、デジタル技術を活用して治療を行う治療用アプリを開発。現在は臨床研究、治験、薬機法に基づく承認取得を進め、2025年度中の承認申請を目指している。

「何件イノベーションが起きたのか定量的な数字で表すのは難しいが、アラムナイの方に当社の研修プログラムの講師をお願いしたり、ファンドを一緒に組成したりするなどの事例は結構出ている。アラムナイと当社が頻繁にコミュニケーションをとることで、ネットワークを今まで以上に活性化していきたいし、活性化した先にビジネスのイノベーションが生まれるのだと思う」と語る柴田氏。

 住商のアルムナイ・ネットワークが注目されるのは、退職者の知見を新事業創造にうまくつなげているから。人口減少時代に入り、ますます人手不足が顕著になる状況にあって、アルムナイを活用する企業は今後も増えそうだ。

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