2024-06-19

荻野明彦・大和証券グループ本社社長「バーチャルが増えるほど、人間はリアルを求める。信頼されるコンサルタントを目指す」

荻野明彦・大和証券グループ本社社長



若い世代の株取引増加へ、アプリの使い勝手向上

 ─ 資産運用が時代のキーワードになる中、高齢の富裕層のみならず、若い世代を取り込むことも重要だと思います。そこに向けての大和証券の取り組みを聞かせて下さい。

 荻野 これまで投資をしたことがない若い世代の皆様には、スマートフォン特化型証券の「大和コネクト証券」をぜひ利用していただきたいです。大和コネクト証券はアプリの使い勝手、いわゆるUX(顧客体験)の外部評価ランキングで2年連続1位となりました。私自身も当然使っており、手前味噌ですが、非常に使い勝手がいいと思っています。

 現在では、ユーザーにとっての使い勝手の良さに加えて、様々な企業との提携を通じたポイント運用サービスやクレジットカード決済の機能を充実させており、提携先企業の皆様にも、大和コネクト証券を使っていただけるような仕組みづくりを進めています。その結果、足元では着実にユーザー数が拡大してきています。

 ─ 非常に手応えを得ることができていると。

 荻野 そうですね。口座数は着実に増えてきていますが、これで十分かというとまだまだです。もっと伸ばしたいと思っています。

 ─ SBI証券や楽天証券、マネックス証券などのネット証券との違いをどう意識していますか。

 荻野 すでに、日本株の売買手数料を無料にしているネット証券もありますが、大和コネクト証券でも、手数料無料クーポンを活用することで、月に10回まで、日本株の売買手数料はかかりません。大和コネクト証券のお客様の内、95%以上のお客様は日本株の売買手数料が無料で取引されており、他のネット証券とほぼ変わらない状態になっています。

 手数料の面での差別化は難しく、やはり使い勝手の良さなど、機能面で訴求することが重要になります。大和コネクト証券では、大和証券が主幹事を務めた際に引き受けるIPO(新規株式公開)の株も、一定比率申し込むことができるようになっており、他のネット証券とは少し違う部分だと思います。

 ─ ネット時代、AIと人との関係が時代のキーワードですが、証券会社における「人」の役割をどう捉えていますか。

 荻野 私は対面のニーズはなくならないと思っています。コロナ禍を経て、バーチャル技術が大きく発展した一方で、野球場のように人が集まる所には、変わらず人は集まります。バーチャル化が進む中で、リアルを追求するニーズは変わらず存在するのです。

 株などの有価証券取引でも、単純な売買はネットで行うのも選択肢かもしれませんが、やはり大きな資産に関する相談となった場合には、信頼できるコンサルタントと話をしながら決めたいというニーズはあると思います。

 今の世の中は情報が氾濫しており、何が本当にいいものなのかを見極めるのが困難な時代です。フィッシング詐欺なども増えている中で、やはり慎重にならざるを得ないのではないかと思います。

 ─ 新しいテクノロジーを入れながら、適切に対応していくということですね。ところで、提携戦略についてお聞きします。5月にあおぞら銀行、かんぽ生命保険との提携を相次いで発表しましたね。どのようなスタンスで臨みますか。

 荻野 5月に立て続けに、あおぞら銀行様、かんぽ生命保険様との提携を発表しましたので、急加速したように思われていますが、これは以前から異なる時間軸で準備し、たまたまタイミングが重なった結果です。

 当社がパートナーとして選ばれるというのは、日頃から様々な企業とお付き合いがあり、我々がそうした提携の話が来た際に対応できる準備が整っていたからだと思っています。

 私は2010年に経営企画部長になってから、この14年間、大和証券のインオーガニック戦略には、ほぼ全てに関与しています。そうした中で積み上げてきた経験やノウハウがあり、今後も、今回の提携のような機会があれば、逃すことなくしっかりと着実に進めていきたいと思います。

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