2024-07-17

〈人手不足解決の鍵〉障害者雇用で高定着率を見せる「ハンディキャップクラウド」と「D&I」の〝対話哲学〟

左から、森木恭平・HANDICAP CLOUD社長、小林鉄郎・D&I代表取締役



リモートワークで正社員雇用に

 障害者雇用のポイントは、いかに業務を切り出すか─と言える。そこで切り出した業務とテレワークを結び付けるテレワーク型障害者雇用サービス「エンカク」を展開するのがD&Iだ。代表取締役の小林鉄郎氏は「コロナ禍を経て、在宅であれば働きたいという障害者が増えた。300万人とも言われる〝潜在労働者〟を掘り起こしていきたい」と意気込みを語る。

 エンカクは同社が開発した障害者テレワーク雇用管理システムの「エンカククラウド」などを活用し、在宅勤務を支援する。それ以外にも障害者のテレワーカーに向けたテレワークの導入から採用支援、入社後の専属トレーナーによる研修と就業のサポートなども行っている。障害者にとって自宅での勤務が可能になれば、身体的・精神的な環境変化に苦手な人でも自宅にいながら仕事ができるようになる。

 一方の企業にとっては、エンカクには勤怠管理機能やタスク管理機能、体調把握・管理機能、チャット機能などが搭載されているため、たとえ障害者が自宅にいても管理が可能だ。また、交通費や場所代もかからない。「創業から15年間、障害者雇用に特化してきたことで、磨き上げたノウハウが強みだ」と同氏。

 小林氏によると、現在、障害者が手掛ける仕事の多くはパソコンを使った入力や調査関連の仕事が多いようだ。特に管理部門の勤怠・給与計算の補助業務や採用関連業務、SNSやマーケティング関連業務なども多くみられ、営業部門では顧客情報の入力やクライアントへの次回アクションのアラートなど、営業担当のサポート業務を担うケースも多いという。

 例えば、エンカクを導入した日本軽金属では精神障害者を人事部で雇用したが、その後も活躍の幅が広がり、現在は営業部での雇用を検討しており、業務を創出中だ。また、ある上場企業のグループ会社では消防設備設計の業務で人手が足りなくなった際、CAD(コンピュータ支援設計)経験のある障害者を派遣社員で紹介。その業績が買われ正社員として雇用された。

 エンカクは現在200社、540人以上の就業支援実績を誇り、精神障害者を含む定着率は90%以上。小林氏は「人口減少という大きな社会課題に直面する日本にとって、いかに働ける人を増やすかが重要。多様な人材を受け入れることが企業の競争力の源泉になる」と強調する。

 厚労省によれば、障害者の総数は推計約1160万人。障害者雇用は企業にとっては法的義務と捉えられている面が大きいが、一方でその企業のブランドイメージの向上や人手不足対策、業務フローの見直しなど競争力の強化にもつながっている。

 2社の取り組みは障害者雇用が企業の業績向上や経済活性化に資することを物語っている。

【関連記事】人手不足解消の手立てとなるか? GMOがAI・ロボット事業に参入

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事