2024-08-08

旭化成社長・工藤幸四郎「我々が進むべき道、やるべきことが極めてクリアになった今、変革していく絶好のチャンス」

工藤幸四郎・旭化成社長

「技術を生かして、ニッチな事業領域の中で収益性を高めていく」─旭化成社長の工藤氏はこう話す。マテリアル、住宅、ヘルスケアの「3領域経営」を進めている旭化成。コロナ禍やサプライチェーンの分断で大きな打撃を受けるなど厳しい状況にも直面。だが「やるべきことがクリアになった。変革のチャンス」と前向きに捉える。電池材料や医薬で大型投資を決めるなど積極経営を進める旭化成の今後は─。


コロナ、地政学的リスクで受けたダメージをバネに

 ─ コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争でエネルギーや原材料価格の高騰など化学業界を取り巻く環境は大きく変わりました。現状をどう見ていますか。

 工藤 コロナ禍、そして同じようなタイミングで地政学的リスクが顕在化し、足元ではウクライナに加え中東が非常に厳しい状況になっています。コロナ禍で需要が急減し、その後収まってきて需要が戻るかという時に地政学的リスクでサプライチェーンが分断されたという流れです。その中で旭化成も大きなダメージを受けました。

 ビジネス上、非常に厳しい環境になったわけですが、その中で感じたことは、アセットが軽く、アジャイルに動ける事業は、瞬間的には厳しい状況になりましたが、立ち上がるのも早かった。

 逆にアセットが重い事業はサプライチェーンが傷んだ時のインパクトが大きいですし、石油化学のように相対的に差別化が難しい事業は厳しい状況になりました。

 今回のコロナ禍、サプライチェーンの分断、インフレなどによって、収益の浮き沈みが激しい事業や、事業環境変化に対応する力が弱い事業が顕著になったということです。その意味で、我々が進むべき道、やるべきことが極めてクリアになりましたから、変革していく絶好のチャンスです。この機を逃すと、改革のチャンスは巡って来ないだろうと思っています。

 ─ 危機こそチャンスだと。様々な事業を手掛ける旭化成の強みを改めてどう見ていますか。

 工藤 旭化成は様々な事業をやっており、1つのカゴに全ての卵を入れてはいません。悪く言えば事業が分散されているということですし、良く言えば事業機会を獲得するチャンスを多く持っているということです。

 しかも、従業員が複数にわたる経験を持っている。多様性、ダイバーシティの時代と言われる中、それ以前から様々な知識、経験を持った多様な人材がグループにいるということです。様々な経験をした人材を経営基盤でどう生かすかということについて大局的、俯瞰的に理解出来ています。そこが旭化成の土台の強さだと思います。

 ─ 多様な事業を持つ強みが人材の面でも出ていると。

 工藤 ええ。もう1つ大事なのは、事業を持ち続けていると、数が永遠に増え続けますから、ポートフォリオの変革をしなければ、持続的な成長が難しくなります。

 従業員は、自分達がやっている事業が撤退、売却されるかもしれないという不安を常に持つことになりますが、ポートフォリオ変革は旭化成のDNAであり、普遍的に取り組むべきものです。旭化成は、そこに対する前向きな覚悟を持つ会社であり、チャレンジングな気持ちを持った従業員が多いことも強みではないかと思います。

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