2024-08-16

【生産性向上】モノやヒトに情報を紐づける! サトーHD・小沼宏行の「自動認識技術」論

小沼宏行・サトーホールディングス社長グループCEO



「三行提報」で新たなアイデア

 1973年生まれの小沼氏は2000年にサトーに入社。10年から5年間、医療事業部の責任者を務め、23年から現職。医療事業の責任者だった当時、新生児の取り違えが社会問題化。医療機関と対話している中で、多忙を極める医療従事者の作業負担を軽減することで人的ミスの防止が実現できると考えた。

 そこで小沼氏が開発したのが母親と新生児のリストバンドをプリンターで同時発行するシステム「koDakara(こだから)」。分娩時に母親の手首から新生児用リストバンドを切り離して装着し、生まれた瞬間に身につけるため、取違いを防げると共に、医療従事者の負担も減らした。

 そもそも同社には常に新たな商品やサービスを開発するための土壌がある。全社員が社長宛に127文字で提案や報告を行う「三行提報」だ。これにより「失敗を許し、他社より早く動くことができる」(同)。小沼氏もkoDakaraの導入に当たって慎重な医療機関から何度も断られたりしながらも素材を変えたりしながら実現させた。

 24年3月期の同社の売上高は約1434億円、営業利益は約103億円と4期連続の増収を続けている。海外は約90カ国で展開しており、売上高比率は国内と海外でほぼ半々だ。一方で、顧客の事業所に足を運ぶことを重視するため、人件費などがかさばり、販管費がどうしても高止まりする。

 22年度の世界のバーコードラベルプリンタの金額シェアで世界第2位のサトーHDの営業利益率は7.2%だが、世界最大手の米ゼブラテクノロジーズコーポレーションは2桁だ。しかし、小沼氏は「販管費も投資だ」と言い切った上で、「顧客の困り事を解決する付加価値の高さで勝負する」と話す。

 さらに小沼氏が見据えるのは新たな分野の開拓。「エンターテインメントの分野で、自動認識技術をエモーショナル(感情的)な領域に広げることができるかもしれない」と語り、既存の分野では自動認識技術で蓄積したデータを「物流や生産システム、マーケティング情報にも生かせる」と小沼氏は語る。

 1940年に竹材加工機械の製造販売から出発して約80年余。デジタル時代を迎えても「深く長く顧客と付き合う」(同)というスタイルを維持するサトーHD。顧客に対する更なるソリューションを生み出す発想力が今後の同社の成長を左右する。

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