2024-09-05

タイミーが「スキマバイト」を開拓した理由とは?企業と働き手双方の新たなニーズに対応

小川嶺・タイミー代表取締役




大手といかに差別化するか?

 小川氏は1997年4月東京都生まれ。立教大学経営学部在学中の20歳の時にアパレル関連事業で起業したが、うまくいかず1年で会社を畳んだ。その時に残った30万円の借金を返済するために日雇いを含め、様々なアルバイトに従事。その過程で現在のタイミーの原型となるサービスの構想を思いついて開発。自身の体験から生まれただけに「労働者の視点でつくっているサービス」と小川氏。

 小川氏の曽祖父は事業家で、明治時代から「小川乳業」という牧場事業を経営。残念ながら小川氏の祖父の代に事業は畳んだが、かつては明治乳業、森永乳業と並ぶ3大乳業の1社と称されるほどだった。そうした環境もあって、小川氏自身も早くから起業を意識していたという。

「スポットワーク」の先駆者として上場を果たしたタイミーだが、今後は決して楽観視できない。メルカリ、パーソルがすでにスポットワークに参入し、今秋にはリクルートも参入を予定しているなど、大手の参入で競争の激化が予想される。「普通の人材会社」になってしまっては大手に太刀打ちできない。

 これに対して小川氏は「切り口を変えたい」とし、タイミーが持つ「データ」が差別化のカギを握るとする。例えば、24年2月に開始したサービス「タイミーキャリアプラス」は希望者のキャリア形成や正社員就労を支援する。この基となるのが、タイミーで働いて得たスキルや経験という「データ」。このデータ資産の蓄積が、先行者利益になると見る。

 もう1つは外部環境リスク。前述のグッドウィルやフルキャストは成長期に労働者派遣法違反などがあり急速に事業を縮小させざるを得なかった。そこで小川氏は「業法に則って事業を行うことを強く意識している」と強調。それ以外にもロビイング専門役員を起用し、政治、行政との意見交換を行う他、メルカリやパーソルなどと業界団体を立ち上げて、ルールづくりも進めている。

 日本の「働き方」の変化の中から生まれたタイミー。今後、インフラとして定着するためには企業、利用者だけでなく、政治や行政、「世論」との対話がますます必要になる。

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