課題解決型ビジネスは創業時からのDNA
─ 新規ユーザーの拡大は進んでいますか。
寺町 これまで機械要素部品は工作機械や半導体製造装置、一般機械が中心でしたが、今は医療機器や物流など、自働化、ロボット化の流れの中で我々の部品をお使いいただく領域が着実に増えています。
そこに必要な新製品も出していますが、やはり機械を使われる、その先にいるユーザー様の声をダイレクトに聞くことをビジネスにしていくことで、さらに技術に磨きがかかった部品の展開ができると思っています。
─ 先ほどの社名の由来もそうですが、THKは最初から課題解決型ビジネスを手掛けてきたと言えますね。
寺町 我々のDNAだと思います。例えば主力製品のLMガイドも「直線運動部」のころがり化は困難とされていたものを、ころがり案内のスプライン軸受であるボールスプラインを開発し、さらに荷重により軸がたわむ課題に対して軸を台に貼りつけることで解決したものがLMガイドの原型です。軸とベースを一体化してレールにすることで品質や精度を高めることに成功したのです。
この軸を台に取り付けようと創業者が考えたことが、当時は非常に画期的でしたし、お客様の課題を解決するために開発した製品になります。
標準品を大量生産して販売するだけではなく、お客様の課題に伴走して、解決していくのが、我々のDNAだと考えています。
─ そのDNAを、今の最新のものづくり、サービスに生かしていくと。
寺町 そうです。自働化が進めば進むほど、機械が壊れると大きなロスを産みます。しかも、工作機械だけでなく、周辺の物を搬送するロボットなどがセットになって初めて、工程が自働化されていくわけですが、工作機械だけでなく周辺機器が壊れるだけでもライン全体が止まってしまう。しかも先進国を中心にメンテナンスする人も減っている。
そのため、20年に部品の状態を監視するサービス「OMNIedge(オムニエッジ)」を開始しましたが、故障の予兆を検知するサービスが非常に重要になってきています。部品の作り込みも徹底的に進めていきますが、その質を高めるためにも、お客様がどのような状態で部品を使われているかがわかると、その可能性は広がると考えています。
─ 23年のジャパンモビリティショーに自社独自の電気自動車(EV)を出展しましたが、この狙いは?
寺町 創業期から自動車の足回り部品は手掛けてきましたが、現会長の時代から、我々の直動技術はもっとクルマの中で使われる、電動化の中でさらにチャンスは広がるはずという考えを持ってきました。
ジャパンモビリティショーへの出展は我々のコアである直動部品を使ったら、自動車でこういうことができるという提案です。電動化、その先の自動運転化という世界が出てくる中、我々も後れを取らないように、持っている考え方を表現し、世の中に知ってもらい、そこを起点にビジネス、研究開発につなげていこうという考え方です。