2024-09-11

生命保険協会会長・永島英器「生命保険は目に見える商品のない信頼ベースの業界。社会保障を補完する役割を充実させたい」

永島英器・生命保険協会会長(明治安田生命保険社長)




「70歳定年制」を導入する狙い

 ─ 明治安田個社のことをお聞きしますが、24年1月にブランド通称を「明治安田」にすることを発表しましたね。これも時代の転換期の中での決断だと思いますが、その狙いは?

 永島 1つ、前提としてご理解いただければと思いますが、生命保険、相互扶助に関して深い愛情や意味を感じていますから、生命保険を捨てるといったことは全くありません。

 ただ、これまでは生命保険を中心に、その保険金や給付金のお支払いという金銭的な、契約の形で確かな安心を提供してきましたが、今後はそれにとどまらずに社会的価値、健康的な幸せ、病気になる前の健康増進、なった後のリハビリといった、保険金、給付金以外でも役割を発揮したいという思いで、ブランド通称の変更を決めました。

 ─ 新たな事業領域の開拓にもつながるのではないかと思いますが、医療や介護といった社会課題解決に向けて、検討していることはありますか?

 永島 私達は国立循環器研究センター、グループ会社の明治安田総合研究所と「循環器疾患の予防・治療」「人々が健康で安心して暮らせる支援」に関する包括連携協定と共同研究事業契約を締結しています。

 例えば、循環器疾病については食生活や運動といった生活習慣でリスクを減らすことができることがわかっています。その観点で健康増進のお手伝いや情報提供をすることで、新たな価値をつくりたいと考えて様々な研究をしているところです。

 ─ 27年度から70歳まで定年を延長する予定と聞きましたが、狙いを聞かせて下さい。

 永島 社会課題として少子高齢化、年金問題などがあります。今の時代、女性はほぼ労働市場で戦力になっていますが、今後の日本を考えた時に働き手として期待されるのはシニア世代です。

 シニア世代個々も、健康でいる限り社会に貢献したい、次世代のために働きたいという方が多い。その意味で社会課題解決、個の従業員の幸せ、両方に資する取り組みだと思っています。

 ただ、65歳で引退した社員も当然、定年扱いで退職金を支払います。何も強制的に70歳まで働いてくれというわけではなく、働きたい方は働くことができるという選択肢の拡大です。

 65歳から70歳までの5年間も、若手と伍して支社長や部長として勤めたいという人は、それを目指せばいいですし、地元に戻って週3日くらい働ければいいという人は、その道を選ぶこともできます。

 当社は全国1000を超える自治体との連携協定がありますし、サッカーJリーグのJ1・J2・J3全てのカテゴリでタイトルパートナーを務めています。自分の住む自治体と会社、あるいはJクラブとの絆を結ぶ役割を果たしたいと言ってくれる人もいますから、多様な働き方を尊重して、その思いに寄り添えるような制度をつくっていきたいですね。

 ─ 産業界全般で人手不足が言われます。営業職員の確保の状況は?

 永島 正直申し上げて、コロナ禍の時に比べると生保業界全体で競争環境は厳しくなっています。その中で選ばれなくてはいけませんから賃上げも実行してきましたし、これは継続的に進めていきます。

 加えて、会社の目指すパーパスに共感してもらって選ばれたいという思いが強いんです。給与や環境も大事ですが、それ以上にこの会社が目指すこと、この会社を通して自分が体験できることを感じてくれる方も増えている気がしますから、そうした面で選ばれればと思います。

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