デジタル化で距離と時間の問題を解決
―― ワクチン接種にしても、予約は自治体によってバラバラで、国と自治体、あるいは自治体同士、そして国と民間の連携がうまく取れていないという課題が見えてきました。デジタル庁の設置によって、こうした問題は解消されるものですか。
平井 デジタルの本来のメリットは「つながる」ということだと思いますが、そのメリットを国民にきちんと届けることができなかったのは、われわれとしても非常に悔しいことです。
ですから、つながるデジタルをやりたいと思っていまして、まずはワクチンの接種履歴を一元的に管理する「ワクチン接種記録システム(VRS)」というものを突貫工事で作りました。
このシステムは国が用意したクラウド環境に、自治体がそれぞれ情報を預けることができるというものです。今までは2~3カ月くらいかけて紙に記録をつけていたんですが、今回は国がフォーマットを作って、各自治体がすぐに情報をアップすることができるようになったので、政府のホームページを見てもらうと、毎日何人の方がワクチンを接種したのかのデータが一目で分かるようになっています。
―― これは画期的と言っていいんですか。
平井 ええ。最近、海外への渡航をしやすくするためにワクチンパスポートという話がなされていますが、こうしたデータベースがあると、何のワクチンを何回接種したのかが自動的に分かるようになります。これはデジタル化の一番のメリットになるのではないでしょうか。
―― 国と地方の関係で考えますと、デジタルでつながることが地方経済の活性化につながるのか。そういうことは今後期待できますか。
平井 デジタル化というのは、距離と時間の問題を解決します。距離と時間に制約されない活動ができるようになるので、例えば、先ほどデジタル庁の発足にあたり民間人材を採用すると言いました。これもエンジニアなど、デジタルワーキングをする方が生活費の安い地元で在宅勤務をすることができるなら、住む場所を問わずに仕事ができるようになります。
今までは東京や大阪などの都市部に出てこないと仕事ができなかったのが、テレワークなどが一気に進むようになる、どこに住んで仕事をしても給料が同じわけです。そうすると、地方にいる人たちも都市部の一極集中を嘆く必要はなくなるし、人々の働き方が変わり、人生の選択肢も変わってくる。これは地方創生という意味でも、新しい日本の形になるのではないかと思います。
―― すでにコロナ禍で、都会から地方に移住した人たちも増えていますしね。
平井 それに加え、各自治体もこれから連携を増やしていくので、どこか一つの自治体で良いアプリを開発したら、それを全国展開することもできる。これは明らかに自治体や地方のベンダーにとっては新しいビジネスチャンスだと思います。