2021-09-01

サッポロビール新社長が語る「主力の『黒ラベル』と『ヱビス』で勝負!」

野瀬裕之・サッポロビール社長



秋から微アルコール商品を投入

 サッポロの特色と言えば、不動産事業だ。グループの営業利益への寄与が大きい。代表格が「恵比寿ガーデンプレイス」。ビール名が街の名になった恵比寿の地でビール醸造の再開に乗り出す構想もある。「JR山手線の内側で作ったビールを味わうという特別な体験ができる」と野瀬氏は構想実現に意欲を示す。

 一方、酒税改正で今後、値段が上がっていく発泡酒・新ジャンルでは「集中型」(同)の戦略をとる。同社は「麦とホップ」「ゴールドスター」の2つに経営資源を振り向け、「味の価値を上げていく」と野瀬氏は話す。

 そして、新たな需要の創造という役割を担うのが微アルコールビールテイスト。同社は9月からアルコール度数0・7%の「ザ・ドラフティ」を発売する。「ビール好きの方が飲まない、飲めないというときにノンアルコールでは満足できずに我慢しているシーンがある。そんなときの選択肢の1つとして提案する商品となる」(同)

 ビールは140年以上の歴史を絡めて味の多様性を打ち出していく一方、誕生から10~20年程度と歴史が浅く、自由度が高い発泡酒・新ジャンル、そして酒税が課されず収益性が高いと見られるノンアル・微アルといった分野では様々なチャレンジをしていくことで、アルコール飲料の可能性を生み出し、新たなニーズを創造していく。

 野瀬氏はサッポロの強みについて「日本人の手による国産ビールの実現に代表されるイノベーションを起こし続けること」と表現する。同社は世界で唯一、大麦とホップの両方を「育種」し、「協働契約栽培」しているビール会社。業界でもいち早く新商品を投入してきた。

 実際、野瀬氏が開発に携わった04年発売の「ドラフトワン」は業界初の新ジャンル商品だった。「世の中を驚かし、生活を変えていくことをコンセプトに掲げて開発した」と振り返る。

 近年、若年層のビール離れが進んでいる上に、今回のコロナ禍で生活様式がガラリと変わった。その中で自社の経営資源や強みをもう一度見直して需要の掘り起こしを進める野瀬氏。業界では〝いぶし銀〟と呼ばれるサッポロの腕が試される。

アサヒに続きサッポロも参入、「低アル市場」が新たな潮流に

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