地域医療の整備が不可欠 ─ あるべき姿をどう見つけていくかですね。
猪口 そうですね。よく日本は病床数が多いと言われています。米国や欧州で病院と言えば急性期を指すのですが、日本では全国の病院の病床数約130万床全てを指してしまう。しかし実態は精神科の病院も三十数万床あり、療養もある。それらを差し引いていくと、おそらく急性期だけで成り立ってる病院の病床数は50万床くらいだと。
一般病床も約90万床あると言われていますが、ここで複雑なのは一般病床が法的に「一般」「療養」「精神」「結核」「感染」と分かれていることです。そのため、一般病床がまるで急性期のように扱われてしまう。しかし実際は、一般病床の中にも急性期の病床や回復リハビリテーション病床、地域包括ケア病床などが含まれているわけです。
全日病に加盟する中小病院は地域の中でも古くからその地に根付いています。例えば開業医から病院になったというケースもあるわけです。そうすると、一部は急性期をやっているけれども、地域の医療体制を考えると、回復期病床や療養病床も持たなければならないということで、病床ごとに細かく機能を分けて成り立たせているところが多いのです。
─ こういった実情を踏まえながら再び起こるかもしれない感染症にも対応できる医療体制の構築が必要になります。
猪口 その通りです。ですから、今後は地域の実情に応じて医療提供体制の確保を図るための「医療計画」では感染症も踏まえたベッドの割り振りなどを考え、「地域医療構想」では人口減少や高齢者対策といった複合的な視点に立って病床を整備していくことになるでしょう。
そのときに地域医療の整備が必要になってくるのですが、これがなかなか難しい。そもそも、どこまでを地域医療と指すのかという課題があります。例えば病院で言えば、救急医療を含む一般的な入院治療が完結する「二次医療圏」が1つの単位になるのですが、東京では1つの二次医療圏に複数の区が含まれ、人口が150万人、200万人という規模になります。
この規模は地方にある1つの県と同じくらいの規模です。そういった中での話し合いになれば本当に難しい。むしろ地域医療を指すときの単位としては、市区町村単位が適しているのではないかと言われています。
─ そうすると、人口30万~40万人という単位が1つの目安ということでしょうか。
猪口 10万人で中小病院が1つといった具合でしょうか。その上の単位で急性期の病院があり、さらに大きい都道府県単位で重篤疾患や多発外傷に対する三次救急や救命救急センターがあると。そういった区分けになるのではないでしょうか。
地域医療構想でも「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」と病床を分類しています。これは病院単位ではなく病棟単位です。ですから、今後は病院単位でどういう機能を持たせていくかという議論に変わっていくと思います。この方向性を示す期限が2025年になります。ただ、これまではベッド数を減らす方向で動いてきましたので、ポスト・コロナを見据えると、再度議論する必要があるでしょうね。
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