2021-12-31

『産業用ロボット』世界トップの秘訣は何ですか? 答える人 津田純嗣・安川電機会長

顧客価値という発想で



 ―― 産業用ロボットで世界トップシェアを誇る安川電機会長の津田純嗣さん、足元では世界的に半導体不足が深刻で、自動車メーカーは減産が相次いでいますね。

 津田 そうですね。産業界では2018~19年にかけて半導体と自動車への投資が極端に減少しまして、その反動が20、21年に現れたということで、製造業は皆モノがない。材料がない、あるいは人が足りず、モノをつくろうと思ってもできないということで、供給側が相当制約を受けている状況です。それでも20年に比べると現在、設備投資も2割ほど増えてはいるんですが、まだサプライチェーン(供給網)は混乱しています。

 当社でも受注残がどんどん積み上がっていて、工場はフル生産です。しかし、お客様に本当に当社がこれだけ出荷したらモノがつくれるのか聞いたら、「実はつくれません」というところも多いんですよ。「完璧にサプライチェーンが正常に整えばこれぐらい出荷したいんだけど」というような話をしている人もいましたので、変にバブル気味になるよりは、これくらいでちょうどいいかなと思っています。

 ―― 改めて、安川電機の強さは、世界一の製品や技術を持っているということですか。

 津田 二つありまして、一つは顧客価値という発想。製品そのものの価値というよりは、ファクトリーオートメーション(FA)をやった時にお客様に提供できる価値とは何かということを50年くらい追求してきましたので、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)という時にロボットの自動化とうまくマッチできると。

 もう一つは、プロセスの知識が多い。例えば、塗装とはこうあるべきだ、溶接とはこうあるべきだというプロセスやノウハウを長年蓄積してきましたので、自動車メーカーや部品メーカー、装置メーカーなど、あらゆる製造業のお客様と徹底的に話ができる。これは当社の大きな強みになっています。

 ―― 何事も顧客起点で物事を考えるということですね。それと津田さんは7月から北九州商工会議所の会頭をつとめていますが、地方活性化のポイントは何だと考えますか。

 津田 実は当社は9月に国内の開発拠点を北九州市に集約したんです。開発者たちがオープンに議論できる場をつくったんですが、例えば、日本の重厚長大産業は本社を地方から東京に移転させる会社も多いですよね。しかし、わたしは東京で遠くから通勤してきて集まるのでは、あまりいい発想が出ないと思っています。地方の利点は職住接近でワイワイガヤガヤできること。今後も地方の利点を生かしながら、いろいろな知恵を出していきたいと考えています。

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