2022-02-14

【学生数は減少でもウナギ登り】なぜ、ジェイ・エス・ビーの「学生マンション」は好調なのか?

近藤雅彦・ジェイ・エス・ビー社長



居住者同士のパーティーも

 こういった強みを身に付けることができたのは同社の成り立ちに起因する。1976年に学生の多い京都でゼネコン出身の創業者が大学生に部屋を貸すだけでなく、その暮らしや学生生活をサポートしようと始めたのが学生マンションのはじまりだった。創業当時から電話の加入権料を払わなくても住居可能な住まいを提供していたという。

 創業者夫婦は「ほうきやちりとりなどの清掃用具を持って物件周囲の清掃をしたり、夜中でも住まいに関することで困った学生から電話が入れば現地に駆け付けた」と近藤氏。その後、同志社大学が京田辺市に、立命館大学が滋賀県に新キャンパスを設ける際、何もない場所で学生の居住ニーズが生まれ、そのニーズをうまく掴んでいった。

 この創業者の思想から学生のニーズを汲み取り、新たなサービスを提供することが同社の特徴となる。家具家電はもちろん、食器や洗剤、茶碗、箸など生活を始めるときに必要な約50点の備品までが付くセットプランも近藤氏が中心となって生み出している。「学生はカバン1つで引っ越しができる」。

 管理運営では基本的にオーナーから物件をサブリース(一括借り上げ)し、入居者の募集から契約、設備の維持管理などを担当。サブリースにしているため、「自社の判断で新たな展開をスピーディーにできる」(同)。

 最近では学生マンションの管理運営のノウハウがない企業や学校等から管理運営を任されるケースも多い。同社は拓殖大学の八王子国際キャンパスの学生寮や、山口大学構内の学生マンションの運営、JR東日本グループと実施している盛岡市内での地方創生をテーマにした若者向け賃貸マンションの運営など、各所と連携を深めている。また、居住者同士のウェルカムパーティーを開くなど、昨今、希薄化が問題視されている若者間のコミュニティの醸成にも寄与している。


ジェイ・エス・ビーが運営する「学生会館 Uni E’meal 新潟大学前」

 同社はサービス付き高齢者向け住宅も展開するなど事業の幅を広げているが、売上高約527億円(21年10月期業績)のうち約9割は学生マンションだ。近藤氏は「学生マンションを主軸とする」(同)考えを貫く。

 建築費の増加や少子高齢化などの課題がある中で、“現代版・大家”として変化し続ける学生ニーズにきめ細かな対応が求められることになる。

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