2022-03-04

【ゴミを原料に】【壁に貼れる太陽電池】積水化学社長が語る「次世代事業」

シート状で超軽量の「ペロブスカイト太陽電池」



炭素取引の切り札にもなる
ごみを丸ごと素材にする技術

 ─ ペロブスカイト太陽電池は、実用化すれば再エネ普及の拡大につながりますね。

 加藤 そうですね。都心には高層ビルがたくさんありますが、高さの割に屋上の面積が少ないので、ビル1棟を賄うソーラーの設置は不可能です。

 ペロブスカイト太陽電池の実装は今後の課題ですが、ビルの壁面にも使える可能性があります。軽いので補助的な電源としてクルマにも使える可能性がありますし、住宅も強度が足らず、ソーラーパネルを設置できない家にも付けられるので、太陽光発電を一気に増やせる可能性があると思っています。

 ─ ごみをまるごとエタノールにするBR技術は、アメリカのベンチャーと共同開発した微生物触媒を使って可燃ごみをエタノールに変えるものですが、技術が確立したら、米ベンチャーと一緒にプラントを建設していくイメージですか?

 加藤 いいえ。基本的な菌の技術はベンチャーから導入しますが、日本においては、われわれが独自に展開できます。
 ごみを燃やしたときに発生するガスを微生物に食べさせるのですが、有害なガスを事前に検知してシャットダウンしたり、微生物のエサとなる一酸化炭素を供給するような工業化の仕組みはわれわれが開発しています。ですので、ライセンスは菌の部分だけで、工業化の部分はわれわれ独自の技術です。

 ─ では、工業化のライセンスで海外展開もしていく?

 加藤 可能性は十分あります。要は、炭素取引の切り札になる可能性もあるということです。われわれの技術でゴミがエタノールになってプラスチックになっていくと。しかもカーボンの消費を大きく減らせるので、海外に展開することで国と国とのカーボン取引を有利に展開できる可能性もあると思います。

 例えば、東南アジアでは今、どの国も受け入れを拒否した廃プラスチックがコンテナに乗ったまま、さまよっている状態です。

 それが逆に原料になるということなので、社会問題の解決にも大きく貢献できます。

積水化学の【得意技を磨き続ける】経営


加藤敬太
かとう・けいた
1958年1月生まれ。80年京都大学工学部卒業後、同年4月積水化学工業入社。2008年執行役員 高機能プラスチックスカンパニー 中間膜事業部長、11年同新事業推進部長、13年開発研究所長を兼任。14年3月常務執行役員、高機能プラスチックスカンパニープレジデント、同年6月取締役、15年専務、19年代表取締役、経営戦略部長、ESG経営推進部担当、新事業開発部長、20年3月代表取締役社長、社長執行役員

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