創業者が確立した基本方針に立ち返って
1965年生まれの楠見氏は京都大学大学院から89年に同社へ入社。創業者の松下幸之助氏は89年4月に亡くなっており、楠見氏が入社した直後。創業者を知る最後の世代でもある。それゆえ、楠見氏は昨年6月の社長就任以来、松下幸之助氏が確立した基本方針に立ち返ると繰り返してきた。
「1932年の第1回創業記念式で、創業者は精神的な安定と物資の無尽蔵な供給が相まって初めて人生の幸福が安定するということを言っている。真の使命というのは、人生の幸福を安定させること。幸福を安定させるということを英語に直したら、サステナブル・ハピネス。イコール、ウエルビーイングだ。当社はもともとそういうことを目指していたのに、ある時から忘れていた。そういうことを思い起こすためにも、原点に立ち返る。経営の基本の考え方に立ち返る」と語る楠見氏。
創業者の思いに今一度立ち返り、“人”のためになる商品やサービスをいかにつくっていくか。楠見氏の覚悟と実行力が問われている。