2022-05-10

【過去最高益】サイバーエージェント社長・藤田晋氏の”次の一手”は?

藤田晋・サイバーエージェント社長


『ウマ娘』が大ヒット
高度化するスマホゲーム

 ─ 最高益に貢献したゲーム事業の今後の展望は?

 藤田 インターネットゲームは、2008年頃からソーシャルゲームという形で始まって10年以上経つわけですが、年々、コンテンツが高度化しています。

『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』など据置型の家庭用ゲームの世界もそうですが、最先端のグラフィックを取り入れて、とんでもない制作費をかけている。

 それと同じことが今、スマホゲームの世界でも起きています。

 多額の制作費、制作年月、それを作るクリエイターやエンジニアの高度な技術力が必要になっていて、ちょっとやそっとの資本力の会社では対応できなくなっています。

 昔は学生ベンチャーでも参入できましたが、今は大きなプロジェクトで、ノウハウも人材も資金もないとできない事業になっています。

 われわれは、スマホゲームも家庭用ゲームと同じようにコンテンツの高度化が進み、いずれ生存競争というか淘汰が起きると想定しながらやってきて、今、それがうまくハマってきたと。

『ウマ娘 プリティーダービー』は馬を擬人化して走らせるというゲームですが、ものすごいクオリティで作られています。開発費も多額の費用をかけていますし、制作年数も5年近くかけています。

 スマホゲームは出して終わりではないので、運営体制も想像される以上の人数で。やってみるとわかると思いますが、簡単に当てたゲームではないことがわかると思います。

 ─ 人・モノ・カネを投資してきた事業だと。

 藤田 そうです。

 ただ、先程お話ししたように、CDやDVDのようにパッケージにして売って終わりではないので、ゲームをリリースした時点から売上が伸び、ピークアウトした後も、そう簡単には売上がなくなるわけではありません。

『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』や『モンスターストライク(モンスト)』などは今でも結構な収益を上げていますし、息が長い事業なんです。

 ─ 息が長いというのもネットゲームの特長?

 藤田 そうですね。「運用」と言うのですが、ゲームを運用して新しいキャラクターを追加したり、イベントをやったりしながらユーザーに遊び続けてもらうので。

 会社組織(子会社のCygamesが企画・開発・運営を担当)でやっているので、長く続けられるのは経営の見通しが立てやすいということもあります。

 ─ その代わり、当たりはずれも大きいと。

 藤田 はい。ただ、当たりづらくなっているので、競合が撤退したり、競争環境としては、かつてよりもずいぶん楽になったところもあります。

 ─ 今後は、コンテンツの力を高めるためのM&Aも必要になってくると思います。

 藤田 ゲームの世界では、マイクロソフトが米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザード社を約8兆円で買収したり、ソニーが米ゲーム大手のバンジー社を約4100億円で買収しています。

 高いレベルのゲームを作って運用していこうとしたら、買収額もその規模になりますし、そのレベルの会社も限られているということだと思います。

 グローバルに当てたら、収益も桁が変わってくるので、われわれも、もちろんそこを狙っていますが、まだこれといったヒットは出せてはいません。

 ─ 最近、制作会社を買収していますね。

 藤田 はい。それは映像制作会社になりますが、ゲームも含めて、世界トップクラスのコンテンツを制作できれば、世界の人に見てもらえる状況になっています。

 例えば、BTS(韓国のアイドルグループ)の所属事務所の決算は増収増益で、韓国のアーティストであっても世界的にトップクラスのクオリティがあれば、世界中の人がコンテンツに課金してくれます。

 マーケットが大きくなっていることは確かです。

 ─ その意味では、今後、グローバルが主戦場になる?

 藤田 そこが短期での拡大に大きく寄与する部分だと思っています。リクルートがインディードの買収で海外売上をものすごい勢いで伸ばしたように、マーケットが大きい海外の売上比率を上げることは大きいと思います。

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