2022-06-09

なぜ今、丸紅は「中東・造水プロジェクト」に取り組むのか

サウジアラビアの『シュケイク3造水プロジェクト』

 

商社で水専門の部署があるのは丸紅だけ



 

 実は中東ビジネスで丸紅が存在感を増してきたのは、現社長の柿木真澄氏の貢献も大きい。当初は中近東でほとんど実績の無かった丸紅だが、柿木氏が関わったアブダビ(UAEの首都)の電力造水事業を受注することができ、カタールやオマーン、サウジといった周辺国で実績をあげていった。

 それだけに、柿木氏本人にとっても今回のサウジの造水事業には個人的にも思い入れがあるのではないか。

 3年前からサウジの首都・リヤド支店に勤務するプラント担当部長の松井正氏は「1960年代後半から当社はサウジに拠点を開設し、石油化学製品、繊維、建設機械鉄鋼などトレードやプラント建設などのビジネスを行っているが、ここ数年で民間投資を活用した電力や水の大型ビジネスの機会が急激に増加してきた」と語り「中東での電力・水ビジネスは他商社に比べて当社は実績を積み上げ続けているが、それこそ柿木の貢献も大きい。今後も中東には各国で大型の入札案件が控えており、シュケイク3の受注はサウジやUAE他、中東諸国での今後の水事業の拡大の布石であり、更なる積み上げを狙う」という。

 丸紅は今年4月から始まった新たな中期経営戦略の中で、「グリーンのトップランナー」を目指す考えを公表。今回の海水淡水化や上下水道の整備などの水事業は、再エネ開発や水素・アンモニアといった新エネルギーの開発と並ぶグリーン分野の注力事業の一つだ。

 前述した柴田氏が所属する環境インフラプロジェクト部は水ビジネスを手掛ける部署で、水専門の部署があるのは商社では丸紅だけ。それくらい、同社にとって水ビジネスは重要な位置づけだと言っていい。

 世界中の国々がウクライナ危機でエネルギーや食糧などの確保に追われる中、人の生活に欠かせない水の確保も大事。そこに丸紅が関わる意義がある。

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