2022-08-02

【創業100年】旭化成・工藤幸四郎社長は「3領域経営」のシナジーをどう出していくのか?

工藤幸四郎・旭化成社長



「アセットライト」と「スピード」の関係


 ─ メーカーとしては、新製品や新たな事業を開発し、世に送り出すことが重要だと思いますが、どのような考え方で進めようと?

 工藤 事業開発、事業を世の中に出していくことについては、ニッチ分野の開発も含めて「スピード」がないといけません。特に今の時代はスピードが非常に重要です。

 そして、私はこの中計の中で「アセットライト」(資産の保有を抑えて、財務を軽くする)を掲げていますが、横に「スピード」とも書いています。アセットライトとスピードは表裏一体の関係にあります。

 自分たち個社だけではなく、アライアンスを組む、合弁を組む、あるいはライセンスを供与するといったことを、その都度戦略的に考えて、我々がやってきた事業を早く世の中に出していくと。

 アセットを重くしたり、アセットをしっかり作ると、成功すれば大きな利益が出てくるかもしれませんが、今はスピードの時代です。アセットを重くしては、とてもそのスピードについていくことはできません。

 従って、どんな選択肢にも「聖域」を設けず、考えながら、早く事業化していこうと。ですから、アセットも軽くしますし、スピードも上げていこうということです。未来形の意味でアセットライトという言葉を捉えています。

 ─ 100周年を節目とした本中計には会社を変革するという意味が込められているわけですね。

 工藤 ええ。私の座右の銘は「伝統は守るべからず、つくるべし」なのですが、その意味は非常にプロダクティブ(生産的)と言いますか、自分が主役であるということが含まれているわけです。

 自分がやらなかったら、誰がやるのかと。自分が歴史を創り、伝統を創るのではないのかと。「守る」と言ってしまったら、今までの伝統を引き継ぐだけの話になってしまう。自分で何かを創り出すというような意味合いを、そこに強く込めています。ですから自分への戒めも当然あります。

 旭化成が100周年を迎えて、まさにここで考えるべき意味合いが、その言葉の中に含まれていると思っています。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事