2022-08-08

国交正常化から50年、今後のあるべき日中関係とは? 答える人 東京財団政策研究所主席研究員  柯隆

北京は日本と会話するチャネルすらない状態に



 ―― 今年は日中国交正常化から50年の節目の年となります。現状の日中関係をどのように見ていますか。

 柯 今から50年前の1972年、当時の田中角栄首相と中国の周恩来首相が、北京で共同声明に署名したことで、両国の国交が正常化され、両国の交流や協力がとても進みました。

 しかし、この50年を見ると決して順風満帆ではありませんでした。それはなぜか。例えば、靖国参拝、台湾問題、尖閣諸島の領有権問題など、日中関係は常に緊張状態にあって、これらの問題を解決せずに、棚上げを繰り返して現在に至りました。

 日本人は物事を曖昧にすることを好みますが、本来は棚上げせず、しっかりとこれらの問題に向き合わなければならなかった。結論を棚上げして、曖昧な状態をずっと続けてきた結果、お互いに国民感情を悪くさせた原因になったわけです。

 ですから、これからの日中関係を考えた時に、是々非々の議論をしておかなければならない。そういう議論ができる環境を整えておく必要があるということです。

 ―― お互いに議論ができる場というのはあるんですか。

 柯 残念ながらありません。

 というのも、昨年の衆議院選挙で野田毅さん(元自治相)が落選しましたよね。そして、二階俊博さん(元運輸相)が自民党の幹事長を外れました。この二人は筋金入りの親中派で、中国にとっての重要な橋渡し役だったんだけども、こうした存在を失ってしまったわけです。

 今の日本の政治を見ると、ものすごいスピードで若返りしています。いわゆる長老たちが権力の座から離れる一方で、若い議員たちにしてみれば、自分たちのお爺さんのような世代の人たちが何をやったかなど関係ない。彼らは中国に対する特別な思い入れがないから、北京は日本と会話するチャネルすらない時代になってきているのです。

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