2022-08-12

デジタル社会を支える【海底ケーブル】 NTT・三井物産 新事業会社の役割とは何か?

海底ケーブルはデジタル経済圏を支える基幹インフラだ(写真はNTTの提供)



自らリスクをとって市場を開拓する時代に



 海底ケーブルの敷設は、国家のデジタル戦略や経済安全保障政策とも密接に絡む。

 今回のNTT同様、米グーグルやフェイスブック(現メタ)も自ら海底ケーブルの敷設に乗り出している他、中国やロシアも強化。中国政府は巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて途上国への敷設を後押ししている。

 こうした流れを受け、グーグルやメタはロサンゼルスと香港を結ぶ海底ケーブルを敷設中だったが、2020年に米司法省がストップ。この海底ケーブルを経由した通信データが中国政府に抜き取られることを懸念したためだと言われている。米中覇権争いは海底ケーブルの世界でも行われているのだ。

 そうした中、岸田文雄首相は昨年12月の所信表明演説で、「デジタル田園都市国家」構想を表明。海底ケーブルで日本を周回する「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を3年程度で完成させるとしている。こうした政策が実現されれば、補助金の話にもなり、今後は参入する事業者も増えてくるだろう。

「かつて国際電話が主流の時は国が主導して通信インフラをつくる時代だったが、今は世の中が電話というよりインターネットの時代になってきている。さらにクラウドやデータセンターという、電話とはかけ離れた分野が伸びている中で、通信会社としてやるべきことがまだまだあると。今は自由競争の中で、民間が自らリスクをとって市場を開拓していくことが求められているのではないか」と語る佐藤氏。

 普段は決して目にすることのない海底ケーブルだが、もはや社会に欠かせない大事なインフラ。日本の経済安全保障や官民それぞれの役割が問われる中で、NTTの新たな挑戦が始まっている。

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