2021-01-22

ジョブ型の働き方が浸透する中、パーソルホールディングス社長・水田正道氏が語る「人材会社の役割」とは

パーソルホールディングス社長・水田正道氏

ジョブ変更、キャリア変更の再教育費用を誰が負担するか

 ── パーソルホールディングス社長の水田正道さん、個人の生き方・働き方が大きく変わった20年でしたね。

 水田 はい。有効求人倍率は右肩上がりで2倍まで行くのではないかとも言われていましたが、今や1を切ることもあります。一方で、将来的な人手不足にどう対応するかも問われています。

 我々はコロナ以前から、10年後の2030年の雇用環境や労働市場をある程度想定していましたが、それがコロナによって、10年を待たず、いま来ているという状況です。

 我々が30年に想定していたことは三つあります。一つは働く人の過半数がシニアになるということ。二つ目はミニマムで30%、マックスで50%の人がジョブチェンジかキャリアチェンジが必要になること。

 三つ目が、同一労働同一賃金で正規・非正規といった区別が意味を持たなくなり、終身雇用・年功序列の〝メンバーシップ型〟から〝ジョブ型〟への移行が加速し、フリーランスで働く人が増え、副業も当たり前の時代になっていくということです。

 ── 雇用する側だけでなく、働く側の意識改革も大事になってきますね。人材会社として、どう対応しますか。

 水田 まさにそれが一番のポイントだと思っています。人が介在する余地は何なのかを徹底的に突き詰めて事業を磨いていく必要があります。

 それには、テクノロジーの活用が重要です。我々は膨大なデータを持っているので、それをどう活用するのか。働く方に喜んでいただける使い方が大前提ですし、プライバシーの問題にも配慮しなければならないので、本業にどう結び付けて付加価値を上げていくかが重要です。

 それから、テクノロジーを活用してジョブチェンジを速やかにしていかなければいけないということです。

 例えば、シニアの方は難しいと言われているコールセンター業務も、AIなどテクノロジーの活用で業務をサポートすることができます。こうしたサポート体制を作ることで新たな仕事の場ができると思います。

 また、再教育も重要ですが、そのコストを誰が負担するのかということが大きなテーマになってきます。社会なのか企業なのか、個人なのか。残念ながら日本の場合、私も含めて、特にシニアの方々は自分にお金をかけて勉強する習慣があまりありません。

 ── 教育は会社がやってくれるという意識がありますね。

 水田 はい。ただ、働き方がジョブ型になってくると、企業が教育コストを出すインセンティブが薄くなってくる。メンバーシップであればMBA修了の資金も企業が出せましたが、ジョブ型や雇用の流動化が前提となったら成り立ちません。

 こうした働き方の変化を見ると、雇用を維持するためにも、雇用の流動化のためのジョブチェンジやキャリアチェンジのためにお金を使うべきだと思います。我々としては、事業を徹底的に磨き、テクノロジーを活用し、再教育の場を提供する。この三つを掛け合わせて、「はたらいて、笑おう。」という企業ビジョンを実現していきたいと思っています。

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