株主総会を巡る様々なニーズを受けて
企業からは「株主総会対策」を依頼されることも多い。特に近年は東京証券取引所の市場再編に絡んで、上場基準となっている「流通株式比率」を高めることを意識せざるを得ない企業も増えており、みずほ信託にもそのための相談も舞い込む。
さらに「アクティビスト」も含めた株主対応をどうしていくか?という要望が大幅に増加している。みずほ信託では、この2年ほど株主総会対策を担う人員を、専門人材を含めて増員している。
アクティビストといっても、今は一括りにできない。海外系のファンド、日本であれば旧村上ファンド系、さらには環境団体など「環境アクティビスト」と呼ばれる存在も登場しており、それぞれに対応は違う。
「修羅場を経験した専門人材も中途入社している。火が吹いた後だけでなく、有事が起きる前の『準有事』の段階、さらには平時からの備えについてのコンサルティングを行っている」
アクティビストの裏にいる株主は誰かといった「株主判明調査」の機能をみずほ証券と連携して高めたり、受け身の対話だけなく、自ら株主にインタビューしに行くような積極的対話なども支援している。
株主総会に関しては、20年にみずほ信託、三井住友信託銀行において、株主総会の議決権行使書の集計方法に誤りがあったことが判明し、問題となった。梅田氏などみずほ信託の経営陣は報酬の一部を返上した。
また、グループのみずほ銀行で発生したシステム障害では、グループ全体の風土を見直さざるを得ない状況に陥った。
「みずほ信託が、著しく風通しが悪い組織だったとまでは思っていないが、各部署の専門性、『縦』の力が強いがゆえに、お客様に総合提案する『横』の連携が足りていなかったという反省がある」
さらに、顧客から聞かれたことに対しては、しっかりと答えるという姿勢は根付いていたが、どうしても「受け身」で、主体的な行動が不足していた。
そこで「思ったことを口に出せる」雰囲気づくりから始めた。「どんなアイデアでも、まず言ってみる。そして周りはそれを否定するのではなく、まずは聞く。それによって『どんなアイデアでも出していいんだ』という形で『心理的安全性』を確保したいと考えた。まだ4合目、5合目というところだが、徐々に変わってきているという実感がある」と梅田氏。
そしてさらに進めて、「学習する職場」というコンセプトで、単に仲良くするだけなく、時には建設的意見をぶつけ合う「健全な言い争い」が起きるような職場にしていくことを目指す。
こうした取り組みは、みずほFG、みずほ銀行なども関心を寄せており、時に事例を共有するようにしている。
「社員には成功体験を積み重ねてもらいたい」と梅田氏。「人生100年時代」、「資産所得倍増」には信託銀行の果たすべき役割は大きい。そこに向けて役割を発揮するための風土改革の日々が続く。