2022-11-28

JFEが進める「脱炭素拠点」づくり 高炉跡地をどう再利用するか?

JFEスチール東日本製鉄所が立地する京浜地区の全景(川崎市提供)



東京湾内屈指の水深を活用して


 しかし、この土地にはポテンシャルがある。

 第2の課題である交通アクセスに関して、インターチェンジが整備されれば大手町まで約30分、羽田まで約10分、横浜まで約5分という形で、交通アクセスが格段に向上する。

 また、東京湾内屈指の水深を誇る「バース」(船の係留施設)がある。A、B、Cの3つのバースがあるが、特にAバースは水深22メートルで、ばら積み船の中で最も大きな船型「ケープサイズ」の受け入れが可能。

 また、周囲に流入する河川がないので、浚渫の頻度は少なくて済み、沖合に橋がないので高さ制限なく入港が可能。

 また、前述のように近隣にエネルギー企業が立地していることで、発電所が多数所在しており、電力の安定供給が可能。この臨海部の発電能力は約830万キロワットと、首都圏一般家庭の消費電力に相当する量を発電できる。

 これらの強みをどう生かして、新たな利用方法を確立するかが問われるが、元々JFEは「ゼロカーボン社会の実現に貢献したい」として、第7次中期経営計画の中で「鉄鋼事業のCO2排出量削減」に加えて、「社会全体のCO2削減への貢献拡大」を掲げていた。

 そこで、高炉が立地する扇島地区を、先行して開発する先行街区と、二次街区とに振り分け。前述の大水深のバースは先行街区に位置するが、これを生かして「周辺エネルギー企業と連携して、海外から水素やアンモニアといったカーボンニュートラル燃料を持ち込み、備蓄、製造して周辺の発電所に供給する『水素サプライチェーン』ができないかと考えている」(岩山氏)

 さらに、JFEスチールは扇島地区に自家発電施設を持つ。この発電所に、先程の水素を供給することで、水素混焼・専焼化による「カーボンフリー電力」の発電所にできないか?という検討も進めている。

 この構想は国、川崎市が目指す方向性とも一致しているという。こうした構想が国策プロジェクトに位置づけられれば、公的資金も活用しながら事業を展開できるようになる。

 他にも、水江地区ではすでに、グループのJFEエンジニアリングがペットボトルや家電のリサイクルを手掛けている。これに加えて、製品プラのリサイクルや、ペットボトルをペットボトルに戻す「水平リサイクル」を新規事業として手掛ける、一大リサイクル拠点として拡張整備することも検討中。

 川崎市が開催している有識者会議での中間とりまとめでは、土地利用コンセプトについても示されている。

 ①カーボンニュートラルを先導、②首都圏の強靭化を実現、③新たな価値や革新的技術を創造、④未来を体験できるフィールドの創出、⑤常に進化するスーパーシティを形成という5つがそれだ。

 先行街区がカーボンニュートラルの受け入れ拠点、さらには次世代物流を実現する拠点、二次街区には防災機能や、短期滞在型スマート住宅や未来型オフィス、「空飛ぶクルマ」や「自動運転」など次世代モビリティを活用できる「スーパーシティ」の形成などが構想されている。

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