2022-11-28

JFEが進める「脱炭素拠点」づくり 高炉跡地をどう再利用するか?

JFEスチール東日本製鉄所が立地する京浜地区の全景(川崎市提供)



カギを握る「用途規制」


 こうした姿を実現するには、前述のような都市計画法の中で土地の用途規制を変更する必要がある。具体的には現在の「工業専用地域」から、例えば「商業地域」などへの変更が望ましい。

 商業地域となれば、大型の工場は立地できないが、住宅、共同住宅、オフィス、ホテル、公共施設、病院、学校など、あらゆる施設の立地が可能になる。「例えば、近接する『東扇島地域』は『商業施設』まで用途変更を受けられている。そこを視野に入れて検討していきたい。規制緩和は重要なテーマ」と岩山氏。

 今後は、22年度末に川崎市から土地利用の方針が示され、それを踏まえる形で、JFEは23年9月の高炉休止のタイミングに併せて、自身の整備方針を公表する予定。その上で「2030年度までに先行街区の一部で街開きができないかと考えている」(岩山氏)

 22年10月26日には、前述の近隣エネルギー企業など9社でで、「扇島町内会」を発足した。業界を横断した町内会で、各社がそれぞれ国や地方自治体と話すのではなく、各社が情報を交換し、一つのまとまりとして交通アクセスや基盤整備の将来の方向性について国・自治体に提言していく方が、今後の力になるという考え方。

「今後、扇島全体が転換していく中で、立地する民間企業の総意として行政にぶつけていく場面が出てくる。例えば、交通アクセスや規制緩和の問題についても、JFE1社でなく、町内会の総意として提言していきたい」と岩山氏は話す。

先行して開発される「創業の地」


 扇島地区などの開発は、非常に時間軸が長い取り組み。それだけに、その土地がどう変わっていくのかというイメージが湧きにくいのも現実。

 そこで重要になるのが、南渡田地区の開発。南渡田は、1912年(明治45年)の日本鋼管発祥の地。現在、南渡田地区はJR貨物の操車場を挟んで北地区で約9ヘクタール、南地区で約42ヘクタールの計約51ヘクタールの土地を有する。

 元々、北地区には研究施設、福利厚生施設があり、南地区は製鋼工場、製管工場として利用してきた。

 川崎市は1996年の「川崎臨海部再整備の基本方針」で南渡田への研究開発の導入を打ち出して以降、長年にわたって、南渡田に「研究開発機能」の導入を検討してきた。

 22年8月には「南渡田地区拠点整備基本計画」が策定され、全体コンセプトを「グリーン社会やデジタル社会を実現する革新的なマテリアルを生み出す研究開発機構の集積」とする方針となった。

 北地区は研究開発機能を中心、南地区は研究開発の他、実験・実証、製造機能などを導入する方針。北地区の開発を1期・2期にわけ、24年度に着手、27年度には1期の街開きを行うことを目指す。

 この「創業の地」での開発は、今後の扇島地区の土地利用転換を果たす上で「先鞭」としての役割を担うだけに役割は重い。

 前述のように、道路網などの条件が揃えば、主要地点へのアクセスは格段に向上する。今後、こうした規模の未開発地が首都圏で出てくることは考えにくく、その点でもポテンシャルはある。

 日本製鉄などが製鉄所跡地を他社の事業拠点や、物流施設などに再整備した例はあるが、カーボンニュートラルなどエネルギー転換の施設とした事例はまだない。

 水素社会が訪れるかどうか、という国策上のリスクはあるが、「カーボンニュートラルを目指す」という国の方針には変わらない。日本の燃料転換の象徴とできるかが問われる。

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