2022-12-26

太陽光パネルの大量廃棄時代にどう備えるか? 『伊藤忠商事』のリサイクル・ネットワーク戦略

太陽光パネルの大量廃棄時代を見据えたリサイクル・チェーンの確立が日本の課題になっている



 一般的な太陽光パネルの構造は、フレーム、ガラス、封止剤、セル、バックシート、端子台などによって構成される。現状の廃棄処分では、フレームに使われるアルミニウムやパネルとパネルをつなぐ銅線、パネル表面に張るガラスなどは回収がしやすく、リサイクルしやすい。 

 一方、発電を担うセルは素材を分離することが難しく、手軽にできるアルミと銅だけ回収し、あとは物理的に破砕し、細かく刻んで、埋め立て処理するケースが多い。しかし、これでは廃棄処理コストが高く、部材ごとに適切なリサイクル処理ができているとは言いにくい。 

「ロシ社には太陽光パネルに含まれる素材の中でも、市場価値の高い銀や銅、あるいはセル自体のシリコンを効率よく回収する技術がある。廃棄処理費用の高止まりは発電事業者にとっても負担になるし、国策として太陽光を増やそうとしている中で社会負担も増えてくる。放っておくと社会負担になってしまうものを、われわれがビジネスとして昇華させることができればと考えている」(六反田氏) 

 ロシ社はセルを熱処理分解し、化学処理によって銀や銅、シリコンに分離する技術をもつ。これまで埋め立て処理されることが多かったセルの大部分を再利用することができれば、資源の有効活用を図れるし、廃棄処理コストの抑制につながるというのが、伊藤忠が出資した狙い。 

 伊藤忠商事エネルギー・化学品カンパニー、再生可能エネルギービジネス課長の村上洋一氏は「環境にいいから、これだけ太陽光の導入が進んでいるのに、リサイクルができないとサステナブルではない」と語る。 

 すでにフランスでは、政府が主導する形で、廃棄パネルの回収スキームが整備され、2021年にはパネルリサイクル事業者の公共入札が行われた。 

 ここで選定された3陣営の中の1社がロシ社。2023年初頭からリサイクル工場を稼働させる予定で、今後は日本のみならず、北米やドイツ、イタリア、スペイン、フランスなど、太陽光の普及が進む欧州での共同展開を検討している。


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