2023-01-18

【第2の創業】レゾナックHD・高橋秀仁社長 「強みである半導体材料に注力し、世界で存在感のある化学メーカーに」

髙橋秀仁・レゾナック・ホールディングス社長



半導体材料で日本は存在感を示せる


 ─ 21年10月には半導体材料や基板、装置の開発を手掛ける12社で「JOINT2」というコンソーシアムを設立しましたね。これも「つながる」という発想だと。

 高橋 そうです。次世代半導体のパッケージングの最適な材料と装置の組み合わせを提案するための取り組みで、経済産業省の助成金なども活用しています。みんなでつながって、素晴らしい半導体のパッケージングをつくることで、これからの社会に貢献し、強いビジネスにすることもできるという考えです。

 ─ 半導体業界における日本の存在感をどう見ていますか。

 高橋 バリューチェーン、あるいは経済安全保障上、日本がどれだけ「チョークポイント」(戦略上重要な場所)を持っているかというと、製造装置、ウエハー、前工程・後工程の材料が集積しています。米国、台湾、韓国など半導体メーカーを持つ国も日本の会社なしには半導体が製造できないことを、よく知っているんです。

 ─ 改めて、最先端分野での開発における官民連携のあり方をどう考えていますか。

 高橋 大きな投資が必要な産業は、ある程度、政府の後押しが大事だと考えています。ただし、半導体分野に限ると、投資額が大きいのは製造装置でも材料でもなく、半導体そのものです。日本には大きな半導体メーカーはありませんから、その点で他国に比べて大きな投資という話にはなっていません。

 ただ、経済安全保障上、日本国内で半導体製造が必要か、必要でないかという時に、例えば台湾の半導体大手・TSMCの熊本への誘致や、ラピダス(トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行が出資して設立した先端半導体メーカー)を国が支援する動きは理解できます。

 ─ 半導体材料を手掛ける中で、この経済安全保障と経営の関係をどう捉えるべきだと。

 高橋 やはり、地域ごとの「塊」が必要なのだろうと思っています。全てが網の目のようにつながっていると、どこかが詰まった時には全てが詰まってしまう。ですから、半導体に関しては、おそらく米国、韓国、日本が1つのブロックになるだろうと見ています。最先端を製造している台湾はどうなるか。中国との関係で悩ましい、ということだと思います。

 ─ いずれにせよ、半導体材料は経営の大黒柱になっているということですね。

 高橋 ええ。半導体・電子材料セグメントの売上高を、2030年12月期には、21年12月期比で約2.4倍となる8500億円超に伸ばす計画です。この時には、レゾナックの売上高に占める割合は50%程度になると見込んでいます。

 しかも、この事業はEBITDAマージン(売上高に対する利払い・税引き・償却前利益の比率)が高いですから、加重平均で会社全体のEBITDAマージンが上がっていくことになると計算しているんです。

 半導体材料は、次々に新しい商品が出てくるのに合わせて、デファクトスタンダードとなる材料をつくり続けなければならないビジネスモデルですから、開発競争に負けないようにやっていきます。

 ─ その意味で、旧昭和電工による旧日立化成買収には大きな意味があったと。

 高橋 日立化成は半導体後工程の主要材料の多くを持ち、それぞれが世界トップ3の市場シェアがあります。技術的優位性も高い。一つひとつの市場が大きくありませんから、参入障壁も高いという特徴があります。

 元々、日立化成は世界で初めて半導体材料に有機素材を使った会社で、その価格設定が非常に上手だったことで今、素晴らしい事業になっています。

 ─ 高橋さんが重要視している経営上の指標は?

 高橋 先程申し上げたEBITDAマージンです。売上高1兆円以上の規模を維持しつつ、EBITDAマージン20%以上を確保しようと言っています。これが実現できれば、ROIC(投下資本利益率)10%も付いてくると考えています。

 このEBITDAマージンは事業部ごとの加重平均ですから、大事なのは高い事業は売上を伸ばし、低い事業は伸ばさないことです。例えば石油化学事業に対しては、売上高を伸ばさすに利益率の改善を求めています。それが会社の全体最適だと。

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