「お客さんを安心させる哲学」で次の成長を!
来年4月には、新しい社長が誕生し、自らは「おそらく将来はファウンダー(創業者)とか、名誉会長といった名称の後見人のポジションになると思います」と永守氏は語る。CEOやCOOといった権限からは離れることになるが、「株主としての立場から言わせてもらう」ということである。
そして、永守氏は、「2030年度に売上10兆円」という目標を掲げる。あと8年で売上を今の5倍に引き上げるというアグレッシブな目標。
同社の成長は、事業のターゲット(目標)をモーターとその周辺分野に絞った戦略が功を奏したのだということ。
「例えば、ロボットはつくらないけれども、ロボットの重要な部品は全部やっていると。工作機械はやってますが、基本はモーターが中心です。車はつくらへんけど、車(の駆動)に使う重要なモーターをやる」
この永守氏の言葉に、同社の成功の秘訣がある。つまり、「わたしは、お客さん(販売先)と競合するものはやらない」という基本方針を創業以来、徹底してやってきているということ。
車の電動化を進める上で、その中核になる駆動装置『イーアクスル』は今、同社が最も注力する投資分野である。
「ええ、電気自動車の部品に出ていってます。これは全く新しい分野ですが、われわれは車はつくりません。あくまでも、電気自動車の部品をつくる。これが成長の元です。全てのお客さんがわれわれのお客さんになってもらえる。競合しませんからね。大事なのは哲学です」
お客さんを安心させる─。この基本哲学は今後も維持していきたいとする永守氏である。