2023-04-05

東レ社長に「繊維営業一筋」の大矢光雄氏、収益力改善目指す

左から、日覺昭廣・東レ社長、大矢光雄・同次期社長

「ROIC」を新たな指標に

「環境変化を経営課題に落とし込み、打ち込んできたところが勝つ」─こう力を込めるのは、東レ次期社長の大矢光雄氏。

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 2023年3月27日、東レは社長交代を発表した。社長には副社長の大矢氏が昇格、社長の日覺昭廣氏は空席だった代表権のある会長に就く。

 大矢氏は1956年6月千葉県生まれ。80年慶應義塾大学法学部卒業後、東レ入社。入社後は一貫して繊維営業に携わってきた「繊維営業一筋」の人物。大矢氏自身「100年近い東レの歴史の中でも、繊維の事業領域全てに携わった珍しい存在なのではないか」と話す。

 日覺氏は大矢氏について「今の東レの繊維事業のビジネスモデル構築、教育も含めた営業力強化に取り組んできた。いろいろな人に聞いても人望が非常に厚い。その求心力を生かして、グローバルに展開する東レの一体感をさらに高めて欲しい」と期待する。

 大矢氏が日覺氏から社長就任を打診されたのは昨年末。だが「その時は一旦、保留しました」と大矢氏。その理由は、事業領域の広い東レにあって、繊維一筋の自分がどうやってカバーするのか?と躊躇したからだという。その一方で、東レという会社は素材の「宝庫」だと再認識。その素材を生かすために「自分がやってきたゼロを1、1を10、10を100にするような営業が今、東レに必要な時代」だと思い直し、就任を決意。

 東レの今の課題は、収益力の改善。収益では、20年5月に目標として発表した売上収益2兆6000億円(今期は2兆5100億円)、事業利益1800億円(同1000億円)といずれも未達。ここからの反転が大矢氏の課題。

 同日発表した26年3月期を最終年度とする中期経営計画では、炭素繊維や水素関連、半導体関連といった成長領域に4500億円を投じる。また、今回の中計からROIC(投下資本利益率)を指標として採用し、自らの事業の将来性を見極めていく考え。

 大矢氏の座右の銘は吉田松陰の「夢なき者に成功なし」。持ち前の営業力を生かして、東レをさらなる成長軌道に乗せることが求められる。

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