2023-04-11

「もはや物流施設と呼ばせない」日本GLP・帖佐義之が進化させる〝物流不動産〟ビジネス

日本最大級の最先端物流拠点の「GLP ALFALINK相模原」。地域のコミュニティ創造にも貢献している

コロナ禍でeコマースが拡大し、多品種少量の商品の在庫保管から仕分け、配送、流通加工といった機能を持つ物流施設の開発が活発だ。そんな中で業界でもいち早く先進的な物流施設の開発・運営を展開しているのが日本GLP。同社の物流施設はもはや荷物の保管場所ではない。工場の機能を持ったり、地域のコミュニティの拠点にもなっている。進化する物流施設づくりとは。

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工場などの機能も融合

 蔵、倉庫、物流施設……。モノを保管する施設は時代と共にその姿を変えてきた。しかし、モノが動くという流れ自体は減少することはなく、増加の一途を辿っている。そんな中、先進的な物流不動産の開発・運営を手掛けるのが日本GLPだ。

 社長の帖佐義之氏は次のように語る。「コロナ禍でeコマースが活発化し、それまで使ったことがなかった人も、その利便性を体感した。コロナが終息してもコロナ前の状況には戻らない」─。eコマースを含めた物流では商品を保管する物流施設の存在が欠かせない。しかし、同社の物流施設は保管だけではない。

 トラックが上下階を自走して荷物の積み下ろしがスムーズにできるランプウェイをはじめ、天高、柱スパン、床荷重など運営の効率化を追求した機能を設け、東日本大震災を受けて顧客の荷物が崩れない免震構造を採用し、非常時電源も常備した。

 また、「食品では野菜を切ったり、魚を刺身用に捌いたり、肉をミンチにするといった加工のプロセスも1カ所でできる」(同)。他にもeコマースのホームページ用の写真を撮影するスタジオを備えていたりもする。

 つまり、物流センターの機能と工場などの他の機能を融合させた施設となっているのだ。さらには昨今ではコンビニやレストラン・カフェテリア、託児所、サッカーなどができるマルチコートなども併設。地域住民も利用できるようにしている。それが大規模多機能型施設「アルファリンク」。既に関東では相模原と流山で竣工済みだ。

「日本では倉庫や物流施設と聞くと、閉鎖的な場所で、渋滞悪化の懸念などからも敬遠されてきた。しかし、物流は我々の生活を支える重要な社会インフラ。もっと地域にもオープンにすることで、物流業への理解促進と魅力を発信したいと考えた」と帖佐氏は強調する。

 例えば、コートを近隣のサッカークラブの練習場として貸し出し、物流施設で働く母親が仕事終わりに子供を迎えに行く。また、毎朝、犬の散歩をした後にファミリーレストランでコーヒーを飲んでいた地域の住民が同施設のカフェテリアに通うようになった。他にも近くの小学校の社会科見学にも来てもらうようにした。さらにはインターンも実施中だ。

「もはや物流施設と言わせない」─。これが帖佐氏の想いだ。もちろん、人手不足が続く物流業界の課題解決にも寄与している。施設内にレストランや休憩スペースを設けるのはもちろんだが、同社の物流施設は入居するテナント同士を〝つなぐ〟機能も持っている。通常であれば入居する企業はライバル関係であったり、顔を見合わせることもなかったが、人手不足などの共通の課題に対して共同配送やドライバーの融通などが実施されている。

 同社の設立は09年。シンガポールのGLPの日本法人として設立された。もともと物流施設という概念がなかった日本で同社が海外から日本に根付かせた。ただ、海外の仕様をそのまま日本に持ち込んだわけではない。「お客様が何をしたら喜ぶかを徹底的に調査するところから始めた」と帖佐氏は振り返る。

 というのも、日本の物流業界は他国と比べても輸送品質が高く、それに付随する物流施設の仕様も高いレベルのものが求められていたからだ。「物流企業などのニーズをヒアリングして日本ならではの物流センターづくりを続けてきた」と帖佐氏。

 アルファリンクはその代表格となる。23年1月には大阪府茨木市で着工を開始し、尼崎でも計画中。同年中にもアルファリンクを含めて約20棟の竣工・着工を見込む。GLPグループの日本における運用資産残高は「約4兆円」(同)に上り、足元では開発中も含めて施設数は200棟に近づく。いずれも「ほぼ100%の稼働率」と帖佐氏は語る。


データセンターや再エネにも注力

 新たな事業として帖佐氏が見据える領域がデータセンター事業と再生可能エネルギー事業だ。

 そもそもデータセンターは物流施設と立地や形状が似ている。その上、「データセンターはデータのロジスティクス、データの倉庫であり、当社の培ってきた建設技術などのノウハウを転用できる」(同)。

 また、再エネに関しては物流施設やデータセンターで消費する電力を施設の屋根に取り付けた太陽光発電パネルや今後新たに開発・取得を検討する設備などで賄うことを想定。GLPは中国において電池世界大手の寧徳時代新能源科技(CATL)との合弁会社も設立している。

「業界にとらわれず、社員が知恵を出し合って新たな領域へと広げていきたい」と語る帖佐氏は三井不動産の出身。Jリート市場が創設され、三井不動産投資顧問に在籍時、GLPの創業者と出会い、物流不動産の存在を知った。「日本に伝わっていないビジネスモデル」であることが魅力に映り、03年に日本GLPの前身会社に入社した。

 ただ、日本GLPの戦略を見て、他の外資系企業や日本の財閥系不動産会社も続々と参入している。それに伴って土地の仕入れ競争も激しくなっている。物流不動産を根付かせ、進化させ続けてきた同社の知恵の見せ所は、これからになりそうだ。

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