2023-05-11

早稲田大学総長・田中愛治「答えのない時代に自ら解決策を考える力を育む」

田中愛治・早稲田大学総長


共生の思想が大事



 ─ なるほど。日本はおもてなしの国と言われているのに、面白い指摘ですね。

 田中 日本人はおもてなしの国ですから、お客様でいる外国人には優しい。日本は世界で一番旅行に行きたい国ですし、京都は世界で一番行きたい町ですよね。

 しかし、同じコミュニティの一員になると途端に厳しくなる。自分たちの意思決定の仕方やしきたりが分からない人は認めないという排他性がある。だから、しなやかな感性を養わなければならないと思うんです。

 今の日本人は内向きになっている。これは本当に問題で、内向きになっていたら日本は生き延びられません。

 ─ 本当にこれは由々しき問題なんですが、どこから手を付けていけばいいですか。

 田中 やはり、日本は18歳人口が激減していて、2012年に120万人、今も105万人ぐらいですが、ずっと出生数は減少していて、昨年の出生数は80万人割れしました。ということは、10年前の2012年と比べて3分の1の人口がいなくなるということです。

 18年後の2040年になっても、仮に大学進学率が50%のままだとすると、40万人程度しか大学に進学しなくなる。そうなれば、知的職業に就く人の数は激減するし、日本の国際競争力は急速に低下します。

 それを避けるには、海外の方が日本で高等教育を受けて、日本に住んでもらわないとダメです。われわれが英語で授業をすることも大事ですが、彼らに日本語で学んでもらう必要もある。それで日本という社会に住み着いてもらわないと。

 その時にしなやかな感性を持って、異なる文化を持つ人たちに寛容で、お互いに認め合わないといけないし、排他的になると衰退するんですよ。このことをわたしは危惧しています。

 ─ キーワードは、しなやかな感性ですね。

 田中 はい。アメリカのトランプ元大統領のような考え方でいけば、アメリカだって衰退します。もともとアメリカは移民を受け入れて多様性を持った国だった。それが排他的になれば衰退するだけです。

 現に今はアジア出身で、アメリカのハーバードやスタンフォードを出た方たちが、アメリカに残りたがらないんですよね。アメリカで学ぶものは学ぶけど、卒業したら日本に帰ってきたり、中国やシンガポールに帰ってしまう。その意味では、アメリカも変わらないといけないし、日本も変わる必要がある。

 日本はおもてなしもできるし、海外の方にも優しくできる国民性があるので、他の文化を受け入れられれば、うまく一緒に住めるんです。そういう共生の思想が大事だと思います。そうでないと、近隣諸国とも仲良くできません。お互いに理解することが大事です。

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