2023-07-05

【監査以外の業務を創造】PwCあらた有限責任監査法人代表執行役・井野貴章「監査業務と監査以外のアドバイザリー業務の両方をやらなければ強くなれない」

井野貴章・PwCあらた有限責任監査法人代表執行役



監査法人の「パーパス」

 ─ 監査業務もリモートとリアル、報酬も監査業務と非監査業務と将来を見据えた同時並行になりますか。

 井野 そうですね。監査のリモートとリアルにおいては、突き詰めるとデジタルでもリアルでも「現地現物」を徹底する点は共通すると思います。

 また、監査業務と非監査業務も対象としている企業活動は共通しているのです。監査人としての独立性を担保しながら角度を変えてアプローチしているにすぎないのです。

 ─ これからの医療法人の監査については、いかがでしょうか?

 井野 はい。医療法人の監査業務でも、一般企業でも話題になっているように、情報セキュリティやガバナンス、コンプライアンスの対応状況にしっかりと目を向ける必要があると考えています。

 その点、当法人には10年以上前から医療法人の課題解決に取り組んできた専門家がいます。医療業界でもランサムウェア攻撃で電子カルテが使えなくなったり、毎月の診療報酬の請求ができなくなったりするなど診療や経営に影響する事案が増えていますし、もし患者個人の機微情報が流出すれば人権問題にもなってしまう可能性がある中で、どうやって病院の経営を守ることができるかについて取り組んでいます。

 ─ 全ての医療法人に共通する経営課題になります。

 井野 はい。当法人の専門家は、システムはベンダー任せではいけないが、個別法人単位で全てを解決しようとすると膨大な予算の問題に直面することを知っています。これを解決できる姿を目指していくためにも、もう少し組織的な仕組みをつくろうと、医療情報システムを提供する事業者向けの、経済産業省・総務省のガイドラインづくりに参画しています。

 また、医療機関向けのセキュリティ啓発活動も同時に実施することで、医療機関・事業者双方のセキュリティの底上げに取り組んでいます。

 ─ 社会課題についてどういう姿勢で取り組みますか?

 井野 私たちには「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパスがあります。このパーパスは日本だけでなく、世界のPwCネットワーク共通のものです。その中で我々は「Trust(トラスト)」と「Sustained Outcomes(サステンドアウトカム)」をキーワードとして大事にしています。

 どんな組織も生き残っていくためには、ステークホルダーに信頼され、持続的で意味のある結果を出さなければなりません。しっかり意味のある結果が出せることで信頼される。社会全体がそのような状態になっていくことを当法人は目指しているのです。(次回に続く)

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